例えば、マンガやアニメ作品の実写化の場合、人間ではない役を演じることもあるので、その役の行動の動機が思い浮かばないことがあるかもしれない。
一方、圭介の場合はあくまでもひとりの人間なので、そういう意味では自分のなかに落とし込みやすかったです。
──では、役作りもそれほど苦労されなかった?
はい。……と言いたいところですが、実はすごく大変でした。僕はいつもお芝居をするときは、何度も台本を読んで自分のなかで人物像をつくりあげていくので、今回もシーンごとに「圭介だったらきっとこうするだろうな」と考えてお芝居をしていたところ、大森(立嗣)監督から「考えなくていい」と、演出を受けまして。今までの僕のやり方ではダメなのか、とかなり悩みました。
監督には「今、わかったでしょ」と
──考え抜いた演技がNGだったということですか?
はい。準備して作り上げてくるのは大事だけど、本番の瞬間はそれを一度全部忘れて演じてほしい、と伝えられました。
また、セリフに関しては「どれだけ時間がかかってもいいので、自分が思うタイミングで発してほしい」と助言を受けて。
これまで自分が作り上げてきたスタイルとは真逆だったので、最初はかなり戸惑いました。でも、徐々に監督の伝えたいことが感覚でつかめるようになってきて、その場での感情を大事にしようと思えるようになったんです。
──「何も考えずに演技する」ほうが難しいのではないでしょうか。
もちろん、事前に準備はするんです。でも、その準備したものを現場で一度捨て去ることで、「何も考えずに」お芝居ができます。撮影を重ねていくうちに、「監督がおっしゃっているのは、この感覚のことかな」と腑に落ちる瞬間があって。「考えないお芝居」がつかめた瞬間、監督には「今、わかったでしょ」と見抜かれていました!
──では、役作りはどのように進めたのですか?
いわゆる「役作り」はしていません。僕が「濱中圭介」の役作りをすると、どうしても圭介のサディスティックな面を出そうとしてしまうと思うんです。でも、実際の圭介は自分のそういう面を出そうと思って行動しているわけではないですよね。だから、僕がお芝居をすればするほど、そこにウソが生じて「サディスティックなお芝居をしている」ように見えてしまう。