1ページ目から読む
2/2ページ目

 この奇妙な事件を担当した検死官チームは、ウィリアムズと同じ身長170センチの成人男性と、彼が遺体となって入っていた横81センチ&高さ48センチのバッグを用意し、実験を試みた。そもそも自らバッグの中に入り南京錠を閉めることは可能なのか。

 検証の結果、400回以上チャレンジし、ようやくバッグに入りチャックを閉めることに成功。しかし、チャックのわずかな隙間から外にある南京錠をかけるのはできなかった。この検証結果と、バスタブや南京錠にウィリアムズの指紋がないことから、検視官らは第三者が二酸化炭素、もしくは短時間で作用する毒物をウィリアムズに投与したうえで、バッグに入れ込み施錠したものと結論づける。

死の直前に「緊縛のウェブサイト」を閲覧

 対し、ロンドン警視庁は具体的な方法こそ説明できなかったものの、ウィリアムズが自らの意思でバッグに入り鍵をかけたと主張した。実は、彼のインターネットの検索履歴を調べたところ、死の直前に緊縛のウェブサイトを閲覧していたことがわかっていた。

ADVERTISEMENT

 また、3年前にはベッドで縛られ助けを求めているところをアパートの大家に発見され「自分が自由になれるかどうか試した」と述べたという。他にもウィリアムズの部屋からは複数の女性服が発見されており、彼が女装家であったことを指摘。つまり、警視庁はウィリアムズが自身の性的嗜好からバッグに入ったものと考えたのである。

 ロンドン警視庁がウィリアムズの死を事故死と発表して2年後の2015年9月、ロシアから亡命した元KGB(旧ソ連の国家保安委員会)職員が驚くべき証言を行った。なんでも、事件の黒幕はロシア海外情報庁(SVR)で、同機関がウィリアムズを脅迫し二重スパイにしようとしたが失敗、彼が特殊な性癖の持ち主とみなされるよう偽装工作したうえでバッグに押し込み、検出不可能な毒物を耳に入れて殺害したのだという。

 実は、ロンドン警視庁も捜査を進めるにつれSVRの存在に気づいたが、国際問題に発展しかねないことを危惧し追及を断念したとの噂もある。一方、このような主張は単なる陰謀論にすぎないとする声も少なくない。ガレス・ウィリアムズの身に何が起こったのか。その真相はわからないままである。