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スイス・フランの「危機察知能力」と海外勢の変化

 岩本氏によれば、危機の際に買われる円とスイス・フランだが、スイス・フランには、とくに優れた「危機察知能力」がある、という。

〈その動きは、ニュースや確固たる情報がなくとも事前に「ひずみ」として、差し迫る危機を知らせる「狼煙」のようなものになる――少なくとも私自身は、為替取引の現場でフランをそのように捉えてきました〉

 2024年になって、そのフランの“潮目”が変わってきた、という。

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〈対フランでの円売り圧力は一服、若干の円高方向へと動き出しています(年明けの172円手前から166円台まで、フラン安円高へ)〉

〈最近、米資産運用会社がキャリー調達通貨を円からフランへと変更させている、との海外報道がありました。主要国がコロナ禍以降、インフレ対応のため政策金利を軒並み引き上げる中、唯一マイナス金利が慢性化していた日本の円はキャリートレードの調達通貨として君臨していました。しかしながら、ここにきて円キャリーは止めて、フランのキャリーへと乗り換える=円を買い戻してフランを売るのが得策、との判断を海外勢は開始したというわけです〉

 こうした海外勢の動きに加えて、さらに米国が利下げに転じれば、円安に歯止めをかけたい政府・日銀にとっては追い風となるはずだ、と岩本氏は指摘する。

スイス国立銀行 ©EPA=時事

「為替介入」は長期的に見れば有効だ

〈為替介入をした瞬間の相場は動かせても、元の水準にすぐに戻ってくるため、為替介入の有効性には否定的な意見がほとんどです。しかし、私個人は、「長期的にみれば介入は有効」との考えです〉

〈若い頃、先輩ディーラーから「この世界で生き残りたければ、当局と同じようにドルを売り買いすれば間違いない」と教えてもらいました。確かに、長期的にみれば、当局ほど上手いプレーヤーはいなさそうです〉

 今後も為替介入が予想されるため、現状以上の「円安」が一時的に起きても、「円安」はそう長くは続かない、と岩本氏は見ている。政府・日銀の動きに反するのは、投資家にとってマイナスに働きそうだ。

 岩本氏が、「為替相場の読み方」を指南する「投資家必読! 円安が続かない理由」の全文は、「文藝春秋」2024年6月号(5月10日発売)、および「文藝春秋 電子版」(5月9日公開)に掲載されている。