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イスラエルの苛烈な反撃はなぜ止まない? 池上彰&佐藤優が徹底解説「同情されて死に絶えるより、全世界を敵に回しても…」

2024/05/03
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ハマスとパレスチナの区別

 池上 ハマスの戦闘員が撮影した動画をイスラエル側が入手して一部を公開していますが、「もう僕も死ぬんだ」と泣き叫ぶ子供の隣で戦闘員が家の冷蔵庫を開け、コーラを飲んでいる、という目を背けたくなる惨たらしい動画もありました。

 ここでやはり「ハマス」と「一般のパレスチナ人」を区別する必要があります。ハマスがイスラエルを攻撃する度に必ず報復攻撃を受けることから、ガザ地区のパレスチナ住民の不満が高まり、7月には数千人規模の「反ハマスデモ」も起きている。今回のハマスの攻撃は、住民の離反に焦った執行部が、敢えてイスラエルを挑発して報復させ、ガザ住民のイスラエルに対する怒りをかき立てるためだったとも解釈できる。

池上彰氏 ©文藝春秋

セレブ生活のハマス幹部

 佐藤 確かにその面があります。イスマイル・ハニヤを始めとするハマスの幹部がどこにいるか、という問題もある。

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 池上 幹部の多くがガザではなく、安全なカタールでかなり裕福な「セレブ生活」を送っているようです。

 佐藤 自分の子供たちを高い学費のインターナショナルスクールに通わせたりしています。

 かつてのハマスは、ファタハ幹部の「腐敗」に対して、その「清貧さ」に魅力があって、実際、貧者救済に尽力していました。

 私のインテリジェンスの恩師は、元モサド長官エフライム・ハレヴィです。彼は〈イスラム系テロ組織の特徴、やり口から判断するに、根本的な解決を図るには、完全なる殲滅以外に方法はない〉と断言しているのですが、彼の回想録(『イスラエル秘密外交』)では、ユダヤ教聖職者とハマス創設者で精神的指導者アハマド・ヤシン師の印象的なやりとりについても触れています。

〈ブリュッセルにいたとき、(略)ラビ(ユダヤ教聖職者)メナヘム・フルーマンに会う機会があった。フルーマン師はなんと刑務所に収監中のヤシン師とたびたび面会していた。彼らは宗教、神学、その他の哲学的な問題について語りあったという。(略)師にとってヤシンはあくまで凶悪な敵であった。それでもフルーマン師は、不倶戴天の敵同士であっても、然るべき形で対話を進めれば、肯定的な結果が生まれる可能性はあると信じていたようだ〉

 この記述からは、ハマスも当初は、ある種の“気高さ”を誇る存在だったという印象を受けます。

 池上 それに対して、今のハマス幹部はかなり腐敗していて、それがガザ住民の不満につながっている。