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介護保険制度によって民間が参入するようになった。競争によってサービスの質を上昇させる建前だが、実態は徹底的な利益優先、さらに介護保険の不正請求は常識である。不正請求は詐欺を意識的にやる事業者もあれば、どうしても書類整備が追いつかなくて結果として不正請求となるケースもある。
介護業界に希望はあるのか。
介護の仕事がブラック、過酷と言われる大きな理由に「保険請求のための書類整備」がある。介護職や介護事業者はサービス提供時間内の行動もすべてを書類化することを求められ、深刻な人手不足のなかで書類に要する時間が全労働時間の3割程度と異常なことになっている。さすがに多少の改善はされているかもしれないが、筆者がかかわった二〇一五年まではメールすら使用することはなく、ひたすら手書きでファックスで送信していた。自治体の介護保険課による事業者への実地指導、監査という書類チェックがあり、本書で描かれる実際と保険請求のためのシフト表が二重にあるのは常識だ。さらに介護職は慢性的な人手不足、介護保険事業者も条件さえ揃えれば、簡単に保険事業者として認可される。入口が広いので反社を含めたあらゆる悪質な人材や事業者が紛れるのは当然で、筆者は実際に介護現場の覚せい剤蔓延を目撃している。
本書はそんな介護業界のそのままのリアルが描かれた。ラストの最新テクノロジーによる問題解決を匂わせる希望は、相場さんの母国への期待と優しさだろう。