介護現場で20年以上働いた経験を持つ、お笑いコンビ「メイプル超合金」の安藤なつさん(43)。小学1年生のときに伯父が運営する介護施設に通い始め、介護業界に携わるようになったという。

 今年1月31日には、自身の経験を綴ったコミックエッセイ『介護現場歴20年』(主婦と生活社)を上梓した安藤さんに、介護中に気を付けていたことや、近年の介護業界に思うこと、介護に悩む人へのメッセージなどを聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)

安藤なつさん ©石川啓次/文藝春秋

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介護中にどのようなコミュニケーションを取っているのか?

――これまで20年ほど介護に関わられてきたと思いますが、一番嬉しかったことって何でしょうか。

安藤なつさん(以下、安藤) 伯父の施設に長期でいる利用者さんたちが、いつ行っても絶対に私のことを覚えていてくれるんですよ。先月も行きましたけど、「ああ、和代ちゃん」って声をかけてくれて。本名が和代なんですけど。

 初めて施設に行った時の温度でずっと接してくれるのが、めちゃくちゃ嬉しいです。

――介護を行うとき、安藤さんが利用者の方とコミュニケーションを取るうえで気を付けていることはありますか。

安藤 うーん、難しいですけど、例えば私が利用者の方に言われたように「化け物!」と言われたときに、傷ついちゃったり辞めてしまう人もいると思うんですよ。暴言を受けて病んでしまう方ももちろんいますし。

 それを笑いに変えるというか、話に乗っかってみるだけでだいぶ気持ちは違うと思います。私のことをお相撲さんだと思っている認知症の方から「秋場所どうなの?」と言われても、自分は笑っちゃうほうだったので。「ちょっと怪我してて~」と返すみたいな。

――すべて受け止めてしまうとしんどくなりますものね。

安藤 すごく直球でくるときもあるので、その直球をいかに受け流すか。流さなきゃいけないことと、流しちゃいけないことももちろんあるので、その判別ができていればいいんじゃないかなと思います。

安藤なつさんは、小学生時代から介護業界に携わっていた(本人提供)

人間の尊厳に関わるところは、気を付けてケアするべき

――逆に、利用者の方を傷付けないために気を付けていることなどはありますか。

安藤 夜間巡回の仕事をしていたとき、利用者の方がトイレを漏らしてしまったときに、他のヘルパーさんが「なんで漏らしてしまったのか」と聞いていたことがあって。