がん細胞は遺伝子変異を繰り返しますから、抗がん剤がだんだん効かなくなってくるのです。やりすぎはむしろ命を縮めることもあります。
抗がん剤はいちばん治療効果が高いものから使い、それをファーストラインといいますが、セカンドライン、サードラインと抗がん剤を替え、今はフォースラインぐらいまでで限界です。ですから、ある時点で、抗がん剤はやめるべきです。
こうした積極的な治療は、進行がんの場合は意外と早く終わってしまいますが、だからといって治療がなくなるとか、諦めるという意味ではありません。
そもそも、抗がん剤をやめたからといって、すぐにがんが悪化するものではありません。
むしろ、抗がん剤をやめることにより、体調がよくなり、がんの進行が落ち着くこともあります。
がんは「克服するもの」でも「打ち勝つもの」でもない
メディアでは、「がんを克服する」とか「がんに打ち勝つ」という言葉をよく目にします。がんは、まだまだ怖い病気ではありますが、共存できる時代になりました。うまく付き合っていってほしいのです。
終末期医療と誤解されがちな「緩和ケア」は、立派な標準治療であり、一部のデータでは、延命効果が科学的に実証されています。
だからこそ、欧米では、がんと診断されたときから緩和ケアをはじめるべきという考え方が主流です。
抗がん剤治療で、逆転満塁ホームランを期待できる免疫チェックポイント阻害剤なども出てきていますし、がんゲノム医療も保険適用になり、保険適用になる新しい放射線治療などもあります。
抗がん剤治療も、今ではほとんどのがんで、外来で治療が管理できるようになりました。
通院による治療が可能なのです。
がんとは共存していく時代であり、長い付き合いになります。
だからこそ、ご自身のより良い人生を諦めないことを最優先にしていただきたいと思います。
がんと言われますと、どうしても、焦ってしまい、慌てて、「○○療法でがんを克服する」などの怪しい情報にすがってしまうかもしれません。