がんと診断されたらどうすればいいのか。腫瘍内科医の勝俣範之さんは「確定診断後の最初の治療がいちばん大事だ。特に早期がんでは手術の前後に行う抗がん剤治療の効果が高い。ただし、『がんを克服しよう』と考えて、抗がん剤をむりに使い続けるのは避けたほうがいい」という――。
※本稿は、勝俣範之『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
「抗がん剤の吐き気の8割」はなくすことができる
薬物を使ってがん細胞をやっつけたり、がんの進行を抑えたり、がんの再発や転移を防いだりする目的で行われるのが薬物療法です。
一般的には「抗がん剤治療」という呼び方のほうが知られているかもしれません。
近年、がん治療の中でもっとも進化しているのがこの薬物療法で、2016年に甲状腺がんに有効と認められて以来、抗がん剤がまったく効かないというがんはなくなりました。
一方で、抗がん剤には副作用があります。それがこの治療の難しさの1つで、薬によっても異なりますし、患者さんによっての個人差もあり、抵抗感や誤解が多いところです。
主な副作用のなかで、最もつらいといわれる「吐き気」については、これを抑える制吐薬が開発されて、8割は吐き気をなくすことができるほどになっています。
脱毛も、頭部を冷却することで、かなり抑えることができるようになりました。
こうした副作用を軽減して生活の質を落とさない「支持療法」という治療法が進歩してきています。吐き気をあらかじめ抑える制吐薬の処方もそれにあたります。
再発防止のためには手術後の抗がん剤治療が有効
現在、抗がん剤は160種以上あり、4つのタイプに分類されます。
化学物質によってがん細胞を破壊したり、がんの増殖をおさえたりする抗がん剤による「化学療法」、ホルモンを利用して、増殖する性質をもつがんに対してその作用を抑える薬剤を用いる「ホルモン療法」。また、がん細胞だけがもつ特有の分子だけを標的にして攻撃する「分子標的薬」。最近では「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる新しい薬を使った免疫療法も登場してきました。