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加計学園で“時の人” 柳瀬元首相秘書官のライフワークは「原発推進」

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2018/04/19

忠実に従った企業が東京電力と東芝だった

「原子力政策立案に当たっての5つの基本方針」には、こんなくだりがある。

〈国、電気事業者、メーカー間の建設的協力関係を深化。このため関係者間の真のコミュニケーションを実現し、ビジョンを共有。先ずは国が大きな方向性を示して最初の第一歩を踏み出す〉

 つまり経産省が示した大方針に電力会社やメーカーが従うという護送船団方式である。この柳瀬氏が打ち立てた方針に最も忠実に従った企業が東京電力と東芝だった。

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©文藝春秋

 東電は当初、海外進出には慎重だったが、電力自由化を進めたい経産省は「海外に出ない限り東電に成長はない」と促し、日本製の原子炉を輸出し、日本の電力会社が原発の運営ノウハウを提供し、日本の商社が燃料のウランを供給するという「原発のパッケージ型輸出」に東電を組み込んだ。

 東電よりはるかに積極的に原発のパッケージ型輸出に参画したのが東芝である。東芝が米原発大手のウエスチングハウス(WH)を54億ドル(当時のレートで約6210億円)で買収したのは、「原子力立国計画」が発表された2ヶ月後の2006年10月。官が打ち出した大方針に見事に足並みを揃えた。

 原発メーカーにとっては従わざるを得ない状況でもあった。建設中の大間原発と上関原発(いずれも運転開始時期は未定)の仕事が終わってしまえば、それ以降は国内での新・増設やリプレースを望めない。地元の理解を得るのは政治的に極めて困難な状況が続いているからだ。東芝、日立製作所、三菱重工業の原発3社が原子力事業を続け、原発関連の技術や人材を維持するには、海外に市場を求めるしかなかった。原子力政策課長だった柳瀬氏はこうしたメーカーの窮状に目配りし、原子力立国計画の中に「我が国原子力産業の国際展開支援」を盛り込んだのだ。

具体策は何一つ実現していない

 驚くべきは、報告書が書かれてから12年が経過しつつある現在、原発の新・増設、高速増殖炉サイクルの実現、放射性廃棄物対策といった「原子力立国計画」に書かれた具体策が、何一つ実現していないことだ。

 政府は2011年の東京電力福島第一原発の事故後、一時は全てが運転をやめた既存原発を再稼働させるのが精一杯で、新・増設が語れる状況には全くなっていない。高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」は廃炉が決まり、放射性廃棄物対策については手付かずの状態だ。

廃炉が決まった「もんじゅ」 ©getty

「もんじゅ」に至っては、50年前に開発が始まり、24年前に完成したが、トラブル続きで運転できたのはたったの250日。1兆410億円の予算を注ぎながら「高速増殖サイクルの早期実用化」にはほとんど貢献できなかった。おまけに廃炉作業は、冷却材であるナトリウムの抜き取りなどが技術的に非常に難しく、現在、示されている「30年で3750億円」という計画の現実性にも大きな疑問符がつく。