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膨らみ続けるコストは、税金と電気料金で負担

 期間とコストが底なしにかかりそうなのは福島第一原発も同じ。2013年時点で政府は廃炉と賠償の総額を11兆円と見積もっていたが、3年後には21兆5000億円に倍増した。まだ放射能で汚染されたデブリを取り出す方法すら見出せていない状況で、廃炉・賠償コストがどこまで膨らむかは誰にもわからない。膨らみ続けるコストは、結局、国民が税金と電気料金で負担することになる。

福島第一原発(写真提供:東京電力)

 加計学園の問題は文部科学省が「不必要」と判断し、長年、認可しなかった獣医学部の新設を「首相の意向」を錦の御旗にして、首相と極めて近しい人物が経営している学校にだけ認めたことに疑念が集まっている。森友問題も首相と首相夫人が近しい人物が経営する学校に国有地を格安に払い下げしたのではないかという疑いだ。「首相案件」が横車を押せるようでは法治国家の看板を下ろさねばならない。民主主義を掲げる国としては由々しき問題である。

 しかし国富を損なう「実害」という意味では数億円、10数億円レベルの話だ。一方、柳瀬氏が書いた「原子力立国計画」は、東芝を海外での原発事業に誘い、総額1兆4000億円という途方もない損失を生んだ。「もんじゅ」でも1兆4000億円、「フクシマ」でも21兆5000億円の国費が費やされる。

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国富の喪失についてどう考えているのか

 米国で進んだシェールガス革命、欧州で進む再生エネルギーの利用拡大。IT企業が加わって電力をより効率よく使うスマートグリッド。電力を取り巻く環境は凄まじい勢いで変化している。

「原子力立国計画」の通奏低音になっているのは、「資源のない日本にとって原子力は必要不可欠」という思想だが、太陽の光は平等に降り注ぐ。島国であるがゆえに日本の排他的経済水域は447万平方キロメートルと世界第9位の広さを持つ。洋上風力発電にはもってこいだ。

 加計問題について、国会で事実をつまびらかに証言してもらいたいのはもちろんだが、ライフワークである「原発推進」がとんでもない規模の国富を喪失させていることについて、柳瀬氏はどう考えているのか。別の機会にでも、じっくり聞いてみたいテーマである。

東芝 原子力敗戦

大西 康之(著)

文藝春秋
2017年6月28日 発売

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