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中国由来よりも恐ろしいPM2.5の発生源はタバコだった

喫煙席に隣接する「禁煙席」でも環境基準の2倍にあたる高濃度

2018/04/21
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「三次喫煙」の潜在的リスクも

 大谷医師によると、喫煙席と禁煙席が隣り合っていると、ドアの開け閉めや人の往来でPM2.5も一緒に漏れ出てくるという。しかも、単に空気に乗って流れてくるだけでなく、喫煙室にいた人の呼気や、衣服に付着して禁煙席に流出する「三次喫煙」の潜在的リスクを引き起こす。

 今年3月、奈良県生駒市役所では、喫煙者はタバコを吸った後45分間はエレベータ利用自粛の呼びかけを始めたが、これも科学的根拠があってのことなのだ。

「マンションのベランダでタバコを吸う人もいますが、サッシの隙間からPM2.5は室内に入り込んできます。当然、両隣や上の階で洗濯物や布団などが干してあったりしたら、健康被害の温床になっている可能性は捨てきれない」(大谷医師)

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 タバコを売る会社があるから吸う人がいるのか、吸う人がいるから売る会社があるのかは知らないが、あいだに入って健康被害に遭うほど馬鹿馬鹿しい話もない。

 そもそも禁煙だ、分煙だ、と未だに騒いでいること自体、日本は世界に大きく遅れをとっている、と大谷医師はあきれる。

「欧米では10年前に終わった議論。飲食店で堂々とタバコが吸える国なんて、先進国では日本くらいでしょう」

あなたも知らない間に「三次喫煙」をしているかも ©iStock.com

呼吸機能の維持に効果的なのは、りんごと魚

 そんな、欧米から10年遅れた日本に暮らす我々に、できる手立てはないものだろうか。藁にもすがる思いで大谷医師に訊ねると、こんな話を聞かせてくれた。

「東京医科歯科大学の研究報告で、新鮮な果物を食べることが、呼吸機能の維持に関与するという結果が出ています。特にりんごにおいて相関の度合いが高く、ジュースなどの加工品になると効果は薄れるというもので、ビタミンCやEなどの抗酸化物質の作用が影響しているものと見られます。同様に、魚の摂取量が多い人は、COPDの死亡率が低いというコホート研究もある。

 反対に、ベーコン、ソーセージ、ハムなどの加工肉の摂取量が多い人は、COPDの発症リスクが高いというアメリカでの研究報告があるので、なるべく控えめにしたほうがいいでしょう」

 副流煙やPM2.5の脅威にさらされている人は、喫煙者にはやさしい政府が、断固たる受動喫煙対策を講じるのを、りんごと魚を食べながら待つしかなさそうだ。

中国由来よりも恐ろしいPM2.5の発生源はタバコだった

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