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可愛い娘がいるのに自害を図ろうと…「なにやってんだ、この父親は!」草彅剛が映画『碁盤斬り』の主人公に憤りながら、それでも熱演できたワケ

可愛い娘がいるのに自害を図ろうと…「なにやってんだ、この父親は!」草彅剛が映画『碁盤斬り』の主人公に憤りながら、それでも熱演できたワケ

映画『碁盤斬り』草彅剛さんインタビュー #1

note

タモリに「向上心がない」と言われて…

―― 「こうなりたい」という向上心があるからこそ、怒りが湧いてくる?

草彅 そうそう、そういう感じ。私はね、タモリさんに「お前は向上心がない人間だ」ってよく言われるんですよ(笑)。でも実はあるんですよ、私。じゃないとこんなエネルギーは出てこないですよ。

―― 格之進も怒りを原動力に、まるで命を燃やすように宿敵を追い求めますよね。無実の罪をかぶせられ、職のみならず妻まで奪われた男、という非常に重みのある役どころです。撮影時、格之進という役に対して、もしくは演じることに対して「もっとこうありたい」と怒りを感じたことはありましたか?

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草彅 というより、格之進に対して純粋に怒ってたね。僕からすると、すごくイライラする人物なんですよ。自分を貫き通す気持ち、武士の誇りがあまりに強いせいで、清原果耶さん演じる娘・お絹までひどい目に合わせて。

©2024「碁盤斬り」製作委員会

―― 格之進が濡れ衣を着せられ、切腹しようとする場面ですね。

草彅 あんなに健気で可愛らしい娘がいるのに……。「切腹なんかしようとしやがって! なにやってんだ、この父親は!」と憤りました。まったく、ひどいお父さんですよ!

京都撮影所で突如降りてきた“閃き”

―― 草彅さんは撮影現場でも常に怒りを燃やしていたのですね。

草彅 うん、僕は格之進をすごく客観的に見ていたんです。だからこそ苛立ったし、その怒りで心を埋めることができたおかげで演じられた。でもある時、「あれ?もう一人、別の視点を持った自分がいるな」と気づいたんです。

―― 「客観的な怒りの目」以外に?

草彅 そう。格之進は敵を討つために旅へ出て、汚れてボロボロになっていく。そんななかでも己を貫き通す魂の強さはけっして変わらない。僕自身に、そしてこの現代においてもまったくない、強烈な輝きを秘めているように感じたんです。「ああ、これがテーマなんだ。俺は格之進の“魂の輝き”を表現しないといけないんだ」と突然閃いて! 白石監督もきっと同じ想いだったんじゃないかな。

©2024「碁盤斬り」製作委員会

―― 表裏一体ですね。草彅さんが苛立ちを感じていた、格之進の「何があっても己を貫く」姿は、一方で、強く惹かれる生き様でもあった。

草彅 そうそう! 「俺は今、格之進に怒っているけど、この感情の源こそが一番大事なんだ。『碁盤斬り』のもっとも大切な核なんだ」って。それに気づけた僕ってカシコイよね(笑)。格之進の魂の輝きを表現しなければ、この映画は成功し得ない。絶対に曲げない強さ、「もう折れればいいじゃん」と苛立ってしまうほどの誇り高さに近づきたい、掴みたいって日々もがいて……あれ、僕なんだかカッコいいね⁉(笑)

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