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 もちろん、そうした壁をぶち破る最高傑作が誕生することもありえます。これまでの概念をぶっ壊すタイプの才能が出てきたら大歓迎です。しかし無策で挑めば、どんなに頑張っても読者には届きません。プロレスにまったく興味のなかった読者が、その小説をきっかけにプロレスを見るようになるくらいの大傑作でないと、このビハインドの状況は突破できない。だからやっぱり、僕はプロレスをテーマにした小説を書きたいと言われたら止めますね。

表現のジャンルによって向き不向きのテーマがある

 プロレスはマンガなら成功作がいっぱいあるんです。まずは梶原一騎原作・辻なおき作画の『タイガーマスク』、それから梶原一騎・原田久仁信のタッグで週刊少年サンデーに連載された『プロレススーパースター列伝』も伝説的な作品です。

プロレス漫画の伝説的作品『プロレススーパースター列伝』(画像:Amazonより)

 実話をもとにしてつくられていて、プロレスはマンガで表現したほうが面白いんじゃないか、とすら思わされます。ほかにも大ヒット作は本当にいくらでもある。マンガだと実際のプロレスでは不可能な動きや技が描けますからね。それぞれの表現ジャンルによって扱えるテーマには向き不向きがあるんじゃないかと思います。小説ならではのテーマを選ぶことも大事です。

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 でも、こういう話をした上で、もしも僕が「それでもプロレスの小説を書きたい」と作家から言われたらどうするか。そのときはアントニオ猪木のプロレス史上に残る名言と、編集者の先輩・中澤義彦さんから教わった中澤イズムをミックスした「出す前に、売れないこと考えるバカいるかよ!」という台詞を心の中で叫んでから言うでしょうね。「やりましょう!」と。

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