捕まれば死罪、家族も重罪に問われても故郷を捨てる。そんな決断がどうしてできるのか。

――1862年3月。坂本竜馬、土佐藩を脱藩。これは彼の人生のターニングポイントであり、日本の近代化を後押しした歴史的決断といっても過言ではない。

 脱藩の理由は諸説あるが、当人亡き今では当たり前のことながら“本当の理由”なんて私たちが知る由もないことだ。だが、『竜馬がゆく』8巻を読むと、彼が脱藩に踏み切るまでの感情の機微に寄り添えるような気がする。

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 時は1861年。江戸での剣術修行を終えて土佐へと帰郷した竜馬だが、とある内乱をきっかけに土佐藩に対して行き場のない想いを抱えることになる。

 当時の土佐藩は武士の中でも上級藩士である「上士」と下級藩士である「下士」に身分が分かれていた。下士たちは上士に支配される立場にあったため、下士は上士に対して強い反発意識を持っている。そんな折に、1人の下士が上士に斬られる事件が発生。被害者の兄が仇討ちで、上士2人を斬ってしまう。この出来事をきっかけに、土佐藩の武士たちは真っ二つに割れ内乱の危機を迎える。

 

 郷士たちは同じ身分であり、剣客として江戸で名を馳せた竜馬を総大将に担ぎ上げて戦おうとする。が、当の彼はこの戦に気が進まない様子。そもそも同じ土佐藩内で争うことに意味はあるのか? という疑問が竜馬にはあった。同時に、この内乱を収めたいならば虎之進の首を差し出せという上士の要求に憤りを感じる……。