1ページ目から読む
3/3ページ目

「今回ジャニー(喜多川)さんに謝る機会を木村君がつくってくれて、今僕らはここに立てています」

 視線を落としたままそう述べると、さらに続ける。

「5人でここに集まれたことを安心しています」

ADVERTISEMENT

 暗いトーンで単調に言い切ったが、それに頷く者は誰もいなかった。

草彅剛 ©時事通信社

草彅の姿勢から伝わってくる、敗北感に似た「虚しさ」

 鈴木さんの小説には、このコメントが「ソウギョウケ」の強い意向だったと書かれていた。それをツヨシに頼んだ、とも書いていた。会見を象徴する「ジャニーさんに謝る機会を木村君がつくってくれて」というコメントを割り振られたことを知った時、彼は敗北感にも似た虚しさを感じたのではないだろうか。視線を落としただけでなく、うなだれたようにうつむいた姿勢に、彼の心の内が現れていたと思う。

 この会見を分析して改めて気づくのは、5人の心理状態以上に事務所側の思惑が伝わってくることだ。事務所側がSMAPの存続を最優先にしていたとすれば、決して黒バックに黒いスーツというセッティングは選ばない。

 これがもし嵐の活動休止会見のように、全員が色とりどりのコーディネートだったら、たとえ同じコメントを述べたとしても印象はずいぶん違ったものになったはずだ。しかしそれ以上に、事務所に盾ついたことへの見せしめという意味が強かったのだろう。

SMAP ©文藝春秋

 最後に木村さんが「何があってもただ前を見て進みたい」とコメントし、「皆さんよろしくお願いします」と全員で頭を下げた。だがこのお辞儀も不自然だった。5人がバラバラで、SMAPがすでにグループとしてのまとまりを失っていることを印象づける挨拶だった。

 この会見は、確かにSMAPというグループに対する公開処刑だった。

もう明日が待っている

鈴木 おさむ

文藝春秋

2024年3月27日 発売