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「まさにそういうことだと思います。彼に問いただすと、取引先の担当者がわけのわからないことを言うから、おっしゃってることがわからないのでもう少しわかるように説明してくださいと丁重に対応していたのに、向こうが勝手に怒り出したので困った、って言うんです。でも、周囲で聞いていた同僚によれば、先方の言うことはよくわかったし、彼の理解が悪いんだと言うんですね。で、私も、先方の言い分を聞くと、けっして理不尽なことではないんです」

『彼の理解力の方に問題がありそうだというわけですね』

「そうとしか思えません。どうしたらいいんでしょうか?」

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 そこで、前項と同じく読解力の問題を指摘してから、さらに他者の視点に立って考える心の習慣についての説明をした。

読解力が不足している人が感情的になってしまうワケ

 コミュニケーション絡みのトラブルでは、

「なんで反発するんだ。何か不満でもあるんだろうか?」

「どうしてあんな意地悪を言うんだろう。怒らせるようなことを言ったかなあ?」

「なんで感情的になるんだろう。嫌われてるのかな?」

 などと訝ってしまうこともあるはずだ。でも、とくに思い浮かぶようなことがない場合は、単にこっちの言うことが理解できないだけ、こっちの意図がきちんと伝わっていないだけであって、不満があるわけでも意地悪を言っているわけでもなく、嫌われてるわけでもなかったりする。

 読解力が不足しているため、こっちの言うことがよくわからず、おかしな反応をしてしまうのだ。正当な要求をしているのに、こっちの言い分をうまく理解できないため、わけのわからないことを言ってくると思い、いちゃもんをつけられてるような気になり、感情的になってしまう。相手はけっしてクレームをつけているわけではないのに、クレームをつけられたと思い込んでしまうのである。

©takasu/イメージマート

コミュニケーション上のトラブルが多発する原因

 前項でも指摘したように、このようなケースでは読解力を身につけてもらう必要がある。

 そのためには、読書などを通して読解力を磨いていくしかない。基本的な国語の参考書などで文章の読解の練習をするのもよいだろう。本を読むようにアドバイスするだけでなく、読書の時間や読解の時間を研修として取り入れるのもよいだろう。

 そうした国語力を高めるという方向の対処に加えて、視点取得を促すのも効果的である。

 視点取得というのは、他者の視点を自分の中に取り込むことを指す。

 相手の言い分をうまく理解できない場合や、コミュニケーション上のトラブルが目立つ場合、この視点取得ができていないことが多い。相手の視点からはどのように見えるのかを想像できず、自分の視点からしかものを言えないため、わかり合えず、トラブルになってしまうのだ。