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「ここまでやらないとレビューサイトからお店を守れない」“変態料理人”稲田俊輔が食べログを攻略した周到すぎる方法

稲田俊輔さんインタビュー#1

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「ソースはどのように使うのでしょうか」というフォロワーの質問に2500字の長文回答を送りつけ、「ソースと共にあらんことを!」とオチを付けることも忘れない、人気店エリックサウスの料理長であり「変態料理人」こと稲田俊輔さん。

  とにかくシンプルで“単純に美味しい”ものが目立ちやすいSNSの中で、稲田さんのマニアックな料理蘊蓄は異彩を放っています。「ナチュラルボーン食いしん坊」、時には「フードサイコパス」と呼ばれることさえある稲田さんの異様な量の知識はどこから来たのか、そして忙しい合間を縫ってなぜあれほどネット上に文字を打ち続けるのか。本人に話を聞きました。

「変態料理人」を名乗る稲田俊輔さん ©三宅史郎/文藝春秋

「何を言っても『変態なら仕方ない』と思ってもらえそうじゃないですか」

――「変態料理人」など稲田さんのニックネームが尖っているのにはなにか理由はあるのですか?

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稲田俊輔(稲田) 僕は豆腐メンタルなので、SNSで炎上するのが怖いんです。だから料理の蘊蓄や、食材の美味しい食べ方を紹介する時も炎上しないように気をつけていて、ニックネームもその1つです。何を言っても「変態なら仕方ない」と思ってもらえそうじゃないですか。

――あれは炎上対策だったのですね!

稲田 そうなんです。ただ同時に、僕には「炎上ギリギリを狙ってしまう」という悪いクセもあって(笑)。誰の心にも引っかかりを残さないことは言っても仕方ないというか、それなら自分の心の中に留めておけばいいと思ってしまって、ついギリギリを攻めてしまうことが多々あります。

©三宅史郎/文藝春秋

――以前、ワインが苦手だという相談に「フレンチレストランでは、ワインを飲まないとお店の世界観を尊重しないお客さんと疑われる可能性がある」とお返事されていた時は踏み込んだ発言だなぁと思いました。

稲田 もちろんマイルドにすることは簡単なんですけど、せっかく相談してくれているわけだし本当のことを言いたいんですよね。だから1000字くらいの回答だと書くのは5分くらいなんですが、その後に炎上ポイントをチェックしたり30分くらい寝かせてから投稿してます。それでもたまに炎上しかけることはあって。「稲田は言葉の自傷癖がある」と言う人もいました。わざわざギリギリのことを言ってるんだからそりゃ血は出るよって。

――時々“流血”はされていても、稲田さんが派手に炎上しているところは見たことがありません。

稲田 たぶんその理由は、「ずるい言い方」をしているからですね。

――ずるい言い方、ですか?