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――誰かの好きなものを悪く言わない、という感覚はここ数年で一気に広がった気がします。

稲田 だから逆に食べログの10年前のレビューとかを今見ると、あまりに辛辣でドキドキしますよね(笑)。当時の感覚でいまも書いてる高齢っぽいレビュアーを見るともっとドキドキするし。

©三宅史郎/文藝春秋

――レビューサイトもご覧になるんですね。

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稲田 自分の店も含めてめちゃめちゃ見ますよ。もちろん参考にする部分もあるし、どういう反応があるかを見たい。何より、お店を守るためにはレビューサイトをどう管理するかがとても大事ですから。

「ここまでやらないとレビューサイトからお店を守ることはできないんですよね」

――レビューサイトを管理するとはどういうことでしょう?

稲田 エリックサウスの前に開いたカレー店の時は、「日本の中では本格的な方」とか「なかなか頑張ってる」みたいな上から目線のレビューをもらうことがよくありました。おそらく本人の気持ち的には褒めてくれてるんですが、この“可愛がられている雰囲気”になってしまうとお店としては結構つらい。だからエリックサウスを作るときに、絶対にそうならないように気をつけました。上から目線でネガティブな評価をする人がいても、むしろその人が「わかってない人」扱いされるように、空気を管理するんです。

©三宅史郎/文藝春秋

――可愛がられるのではなく、リスペクトされる立ち位置になる。

稲田 まさにそうですね。僕自身が南インド料理のマニアであることをアピールしたり、料理の蘊蓄をSNSに書いたりするのもその一環で、「よく頑張ってる」みたいに上から目線で書かれることはさすがに減ってきました。ただ1個反省しているのは、コントロールがうまく行き過ぎて、エリックサウスの悪口を書きづらくなりすぎてしまったかなと思うことがあります。そうすると逆に、僕らが気づいてないお客さんの不満を拾えなくなってしまうので。ただ、ここまでやらないとレビューサイトからお店を守ることはできないんですよね。