「電気ポットで沸騰させた100度近い熱湯ですよ。もう、玄関前でアチチチ!って、のたうち回ってね。すぐに頭を触ると、皮膚がブヨブヨになってるんです」

 かつてフィリピン人妻のジェニファーと夫婦生活を送った、漫画家の近藤令氏。ときには100度近い熱湯をかけられ、またあるときはビール瓶で流血するほど殴られた理由とは? 壮絶な夫婦生活の模様を、新刊『底辺漫画家 超ヤバ実話』(青志社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

突然の暴力、流血が止まらない、驚きの夫婦生活とは? 写真はイメージ ©getty

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熱湯を掛けられ、頭が鉄腕アトムに

 結局、貧しい漫画家のアシスタント暮らしの中で、なんとかこの生活から脱したいと思うけど、そんなカンタンに連載なんかとれないし、漫画家としての再スタートを切れない。それで、ジェニファーも気を使ってくれたのか、喫茶店より水商売の方が実入りもいいだろうってことで、近所のスナックに働きに出るようになりました。ぼくも夫としては心配ですから、彼女が面接に行くスナックに連いて行ってね。すごく感じのいいママさんだったんで、「きょうからよろしくお願いします」なんて言ってお願いして、彼女はそこで働くようになったんです。

 そうなると、こっちも生活に少し余裕が出るんで、これまでずっと我慢してきたことをやるようになりまして……。時代は、ゲームセンターで『バーチャファイター』っていうタイトルが大人気の時。ぼくもハマってしまって。いつもだったら、仕事が終わればすぐに帰宅するのに、1~2時間ぐらいゲーセンで時間をつぶして帰るんですよ。

 もう、ジェニファーもカンカンに怒ってね、「なんで、ずっと待ってるのに、すぐに帰って来ないの!」とか「そんなおカネに余裕があるなら、生活にまわしてよ!」なんて、かなりパワフルな感じで怒るんです。ぼくもその気持ちは十分にわかっていたんですけど、ずっと働きっぱなしですから。ちょっとくらい余暇を楽しんでもいいじゃないっていう気持ちもあって、なかなか素直に受け入れられなかったですね。

 で、あるとき、あまりにもゲームに没頭しすぎて、いつもより遅い時間に帰っちゃったんですね。まぁ、深夜ですよ。もちろん、部屋の電気は消えて静かになってて。こっそり、玄関の鍵をあけようとしたら、中からチェーンが掛かっていました。寝てる子どもを起こさないように、小さな声で、

「ジェニファー……ジェニファー……」って呼ぶんだけど、なかなか玄関まで来る気配がない。しびれをきらして、玄関のドアを軽く、軽くですよ、トントントンってノックしたら、目の高さぐらいのところにあるキッチンの小窓がすーっとあいてね……。

 心の中で、「また、ここで言い争いになるのかな……。素直に謝っちゃおう」って思っていたら、ジェニファーの顔が一瞬だけ、チラっと見えた直後、なんだか小さい手鍋を握った手がニューっと出てきて、熱湯を頭にザァーって(笑)。