「子どもが一人になっちゃうのはかわいそうだったけど、結婚7年目で離婚を決めました」
最愛のフィリピン人妻のジェニファーと7年で離婚……楽しい時期もあった2人に何が起きたのか? 漫画家の近藤令氏の実体験を綴った新刊『底辺漫画家 超ヤバ実話』(青志社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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フィリピン人妻にビール瓶で殴られた話
これはもう結婚生活の終盤でしたけど、アシスタント仲間といっしょに、ぼくの実家近くの立川市のキャバクラで飲んでたんですよ。
ちょうど仕事も忙しくなって少し羽振りもよくなった頃なんで、「久々に憂さ晴らしでもしますか」っていうことで。
それでまぁ、女の子を数人、横に座らせて、浴びるように酒を飲んで、いろいろと下世話なことを言っているときに、目の前にいた女の子が身構えるような感じでザァーっと逃げてくんですよ。
となりの仲間を見たら、見ちゃいけないものを見ているような顔をして、何かを見上げてる。なんなんだと思って、パッと振り返った瞬間に、ジェニファーがビール瓶を手に持って、思いっきりぼくの頭に振り下ろしたんですよ。一切の躊躇なく、脳天にビール瓶がカーンってヒットした。
しばらくは、目の上のあたりが光でチカチカした感じで、視界がぼやけてものが見えない。お店の中も、ママとか従業員の女の子が、キャーキャーって叫んで逃げ回るし、ぼくもチカチカしてると思ったら、顔面の方に生ぬるい液体がざぁーっと流れてきてるのがわかった。
ちょっとだけ手で触れると、ビールじゃなく、真っ赤な鮮血が頭頂部から流れ出てきてる。ママも慌てて、タオルを持ってきてくれたけど、噴水が吹き出すように血が出ているからタオルじゃとても吸いきれない。
ジェニファーはそんな光景に臆することなく、じっとぼくを睨んでいるしね。救急車を呼びましょうってママに聞かれたけど「いやいや、大丈夫です」って言って。やっぱり、お店に迷惑は掛けちゃいけない……いやもうすでに、十分に掛けているんですが、自分で処理しようと。
それで、怒りに震えるジェニファーをなだめて、お店を出ました。
さすがに、飲み屋に行ったぐらいで、ここまでやるとは。
大げさじゃなく一歩間違えば殺人事件ですよ、こんなの。
きょうはもう、一言いってやろうと思って、ちょっと怒った感じで、「あれは、やりすぎじゃない?」って、やんわりと切り出したら、何も言わずにいる。
あれ?と思って、顔をのぞきこんでみると、泣いてたんですよ。さっきまで猛烈に怒ってた彼女が、悲しそうな顔で泣いてるんですよ。
あぁ、そうか、ぼくのせいでこんなことをさせたんだなって。