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“愛国者”から浴びせられる罵声

 土砂の採掘許可は沖縄県に権限がある。具志堅さんは採掘を認めないよう訴え県庁前でハンガーストライキを行った。その背後を、日章旗を掲げた車が軍歌を大音量で流しながら大声で叫ぶ。

「お前ら、そこで何やってんだ、コラ!」

 “愛国者”を自認する人々が戦没者の尊厳を訴える人に罵声を浴びせる。矛盾が際立つシーンだ。

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奥間監督の祖母の妹も沖縄戦で亡くなった ©Okuma Katsuya, Moolin Production, Dynamo Production

 ハンストの最終日、玉城デニー沖縄県知事が差し入れを持ってやってきた。

「あんまり負担かけるような話はしないからさ。来てくれただけでうれしいから」

 具志堅さんは知事の立場をおもんぱかった。それから9か月、「採掘許可 苦渋の決断」という記事が新聞に出る。黙って紙面を見つめる表情は映らないし、言葉もない。ただ、無念さが静かに伝わってくる。

不条理のそばを黙って通り過ぎるわけにはいかない

 私は3年前、具志堅さんにお会いし一緒にガマを訪れたことがある。国との交渉での理不尽、何を言っても届かない悔しさ。それでもなぜくじけずにいられるのか?

「…不条理のそばを黙って通り過ぎるわけにはいかないからです」

©Okuma Katsuya, Moolin Production, Dynamo Production

 映画は最後、再びガマの暗闇と静寂の中で具志堅さんが語る。

「人の形をとどめないほどに散乱している、その人たちの最期の思い。そこにどう向かい合うか? 私は、戦没者に対する最大の慰霊は、二度と戦争を起こさせないことだと思ってます」

 これは静けさの映画。慰霊について、沖縄の不条理について、静かに考えさせられる115分だ。

 

『骨を掘る男』
INTRODUCTION
 沖縄戦の戦没者の遺骨を40年以上にわたり収集し続けてきた具志堅隆松。これまでに、およそ400柱を探し出した。ガマ(洞窟)の闇の中、泥にまみれ、土を掘り続けてきた。
 砕けて散乱した小さな骨、茶碗のひとかけら、手榴弾の破片、火炎放射の跡。沖縄の人びとや旧日本軍兵士、米軍兵士、朝鮮半島や台湾出身者たちの骨が埋まったままの土砂が、新基地のための埋め立て工事に使われようとしている。

STAFF
監督・撮影・編集:奥間勝也/2024年/日本・フランス/115分/配給:東風/https://closetothebone.jp/6月15日より全国順次公開