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「君も闇を抱えてるに違いない」

 常にひとりぼっちで初登場は真っ暗な教室に浮かび上がる顔……。この“死神”こと小野田健介が佐々田の新しい友達になるのだが、優希と違ってザ・陰キャな性格をしているのだ。初対面の佐々田に「(君も)闇を抱えてるに違いない」と断言する陰キャ独特の勢いに押されるようにして、佐々田は彼と親しくなっていく。

 

 一方、意外と成績優秀な優希は、友達とプールへ行ったり、部活動の練習に精を出したりなど、アウトドアな夏休みを満喫していた。今のままでも充分だけれど、この夏をさらに完璧にするために「彼氏ゲット」を目標に掲げ、彼女のボルテージは加速していく。

 

 “死神”と交流を重ねる佐々田。彼氏ゲットのために他校の男子生徒とコミュニケーションをはかる優希。形は違えども2人は学校の外、つまり普段の領域の外にいる人と一緒に自分だけの夏物語を描いていく。その先にあるのは、大人になった今、ふとした瞬間に自分の心を照らすような美しい情景であったり、本当の自分を再認識するきっかけとなった成長の一歩であったりする。その当時はなんてことないかもしれないが、それらは間違いなく人生における宝物の一つなのだ。

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 佐々田や優希自身もその宝にまだ気づいていないかもしれないけれど、この夏を通して確かに“何か”が変わった。2学期始まりの学校生活の様子から、この夏がかけがえのないものであったこと、そして2人が“変化”したことを実感する。表面上は変わらず平和な学校生活が続く中、確かに変わった佐々田たちは、これからどんな化学変化を見せてくれるのだろうか?