鉄人からのプレゼント
〈久米宏氏(79)は1967年、TBSにアナウンサーとして入社。『ぴったし カン・カン』や『ザ・ベストテン』の司会として人気を博し、79年に退社。85年から2004年までテレビ朝日の『ニュースステーション』のメインキャスターを務めた。
西川美和氏(49)は、02年に映画監督デビュー。『ゆれる』『ディア・ドクター』『すばらしき世界』で、ブルーリボン賞監督賞を受賞。作家としても活躍し、小説『永い言い訳』は直木賞候補にもなった。この4月、文藝春秋に連載したエッセイなどをまとめた『ハコウマに乗って』(文藝春秋)を上梓した。〉
西川 『ハコウマ』の連載が終了した際には、わざわざ「お疲れ様でした」とメールをいただき、ありがとうございました。
久米さんとの最初の接点は、私の映画『永い言い訳』にコメントを寄せていただいたことでしたね。
久米 主演の本木雅弘さんが、奥さん役の深津絵里さんに髪を切ってもらいながら、不貞腐れた顔で「衣笠幸夫(きぬがささちお)」と、自分の名前を言う場面で笑いました。僕は、鉄人・衣笠祥雄さんの大ファンでしたから嬉しかった。
西川 偉大な有名人と「名前が同じ読み」という宿命を背負った男という設定で。作品をご覧いただいたら、衣笠さんも「実は俺も女房に髪を切ってもらっていたんですよ」と、おっしゃるので驚きました。
その時に「限りなき挑戦」と書かれたサイン色紙をいただいて、いまも机の前に張ってあります。
久米 僕も衣笠さんにいただいたバットを家に飾ってあって、お客さんによく自慢しています。ラジオのゲストにも出てもらった。西川さんにも出演してもらいましたよね?
西川 最初に呼んでもらったときは、カープの試合を観に行く約束があってスタジオに行けないと伝えたら、ぜひ電話で中継を、と言われて、「いま、私はマツダスタジアムに来ています!」って呼び掛けたんですよ。
久米 えっ、そうでしたか。それは、ひどいことしますね(笑)。
西川 初めて直接お会いしたのは、カープがリーグ3連覇を果たした翌年の2019年、広島ホームテレビのカープ特番の撮影でした。
久米 都内のお好み焼き屋さんでしたね。お綺麗な方だなとビックリしました。
西川 いやいや(笑)。
久米 お喋りについ夢中になってしまい、美味しそうなお好み焼きにまったく手を付けなかったのを、後になってから後悔しましたよ。
西川 あの年から、3連覇したことが嘘だったかのように、全然勝てなくなってしまいました。
久米 ここ数年は、「昔はずっとこんな感じで我慢しながら見ていたんだよな」と思い出しています。ただ、今年は開幕してすぐはいつも通りだったのですが、徐々に調子を上げてきて、「もしかしたら」と期待の持てるシーズンになりましたね。