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 吐き気と食欲不振に次いで、8月10日あたりから、次の副作用が始まった。抜け毛だ。シャワーを浴びて頭を洗うと、髪の毛がごっそりと抜ける。朝起きると枕の上に大量の抜け毛が散らばっている。入院してすぐに病院内の理容室で3ミリの丸刈りにするなど“対策〞は講じていたが、それでも、シャワーの際、手のひらにごっそりとついてくる抜け毛を見ると、すごく悲しい気持ちになった。

 それからわずか数日で、カッコ良く言えばスキンヘッド、要は、ハゲになってしまった。僕は元来、髪が太くて、硬く、そして多い。薄毛とは無縁と思っていたから、やはり最初はかなり落ち込んだ。

 それを救ってくれたのが、やしきたかじんさんの奥様だ。

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 たかじんさんには、『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ。現『そこまで言って委員会NP』)という番組でお世話になり、テレビの世界のイロハをいろいろと教えてもらうなど、ずいぶんとかわいがってもらった。僕にとって大恩人のひとりなのだが、とても残念なことに、2014年に食道がんで亡くなってしまった。

 奥様とは、たかじんさんが亡くなってからは交流が途絶えていたのだが、僕の病気をニュースで知り、メールをくださった。

 メールには、たかじんさんも、抗がん剤で頭髪が抜けたことが書かれていて、当時の写真が添付されていた。

 これまで見たこともないくらい髪を短く刈り込んだたかじんさん、そして、スキンヘッドになった後に髪が少し生えてきた頃のたかじんさん。

 たかじんさんも、僕と同じような思いをしながら頑張ったのだと思うと、ものすごく励まされた。

 と同時に、たかじんさん、そしてバラエティ番組で鍛えられた、どんなことでも楽しんでしまうという精神が蘇ってきた。頭から髪の毛という存在が消えたのは、60年の人生で初めてのこと。いずれまた髪が生えてくるのだから、今この刹那のハゲを、思い切りエンジョイしよう。そんな風に、考え方が百八十度転換できたのだ。

©杉田裕一

 奥様が送ってくれたたかじんさんの写真は、今もお守りとして僕のスマホの待ち受け画面になっている。