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造血幹細胞の採取、そして、抗がん剤投与

 入院して最初に受けたのは、あのイヤな骨髄穿刺をはじめ、さまざまな検査だった。首を通る太い血管に挿入されたカテーテルを通じて造血幹細胞の採取や抗がん剤投与、毎日の点滴や輸血が行われたが、当初は、カテーテルという“異物〞が体内にある違和感と痛みに、かなり悩まされた。

 7月26日、造血幹細胞の採取が4時間かけて行われた。カテーテルを通じて血液を採取し、機械を使って造血幹細胞だけを取り出して、残りの血液は体内に戻すという作業だ。

 この作業は体への負荷が大きかったのか、終了後には疲れがどっと出てしまい、何もする気が起きなかったほどだ。もっとも、必要な量の造血幹細胞が採取できなかったら、翌日も同じ作業をすることになっていたので、1日で終わったのはラッキーだった。

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 その後、7月30、31日の2日間にわたって抗がん剤投与が行われたが、これが予想していたより遥かに大変だった。

©杉田裕一

 抗がん剤の副作用といえば、髪が抜けるとか猛烈な吐き気とかが知られているが、口内炎もそのひとつ。抗がん剤は、粘膜にも悪影響を及ぼすため、口内炎を発症しやすいそうだ。口内炎は感染症リスクを高めるし、ひどい場合は口の中が口内炎だらけになるので、吐き気もあいまって食事が摂れず、栄養不足になって体力も落ちてしまう。患者にとって、非常に厄介な副作用だ。

 その予防策として、30分かけてカテーテルから抗がん剤を投与する際、ずっと氷を口に含み、しゃぶり続けた。口の中を冷やすことで、口内炎の発症がある程度抑えられるためだ。

 口の中の氷が溶けては新しい氷を口に含む。これを30分続けるのは、思いのほか辛かった。めんどうだし、疲れるし、ただでさえ冷房が効き過ぎている病室はとにかく寒い! 外は猛暑なのに、僕は、寒さとも闘わなければいけなかったのだ。もっとも、この苦行(⁉)に耐えた甲斐あって、口内炎を発症せずに済んだけれど。

 抗がん剤の投与が終了した翌日の8月1日に、カテーテルを通じて造血幹細胞が移植された。移植自体はスムーズに終わったものの、この後、僕は本格的に抗がん剤の副作用に悩まされることになる。

吐き気と食欲不振、抜け毛に悩まされる

 翌日から覚悟していた副作用が出始めた。8月1日から5日間にわたり、胸がムカムカして、吐き気もひどく、何も食べられない状態が続いたのだ。甘いものが大好きな僕が、事前にコンビニで買っておいたお菓子を見ただけで、気持ちが悪くなったくらい。

 ベッドの上で上体を起こしているだけで気分が悪くなり、活字を読むとめまいがする。ひどい二日酔いの状態で、大波に揺れる船に乗っているようなものだ。それが5日間続いたのだから、心身共に疲弊した。

 それでも、抗がん剤投与から6日が過ぎた頃には吐き気がだんだんとおさまり、食事も食べられるようになった。人によっては3週間くらいは何も食べられない状態が続くこともあるそうなので、看護師さんいわく、すごく早い回復ペースだった。人並み外れた体力のおかげのようだ。

 5日間は、点滴で薬と共に栄養分やカロリーを補給していたので、食事を食べられる喜びを改めて実感した。