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その年の12月、神戸西署は強制わいせつ容疑で田村を逮捕する。押収したスマホには女性の悲鳴が多数収められていた。しかし、その悲鳴よりも捜査員を驚かせたのは、それとは別に保存されていた動画の数々だった。
押収したスマホから見つかったおぞましい動画の数々
「○○君、口、口」
「早すぎる、早すぎる。もう1回」
「舌入れな」
再生すると、はやし立てる数人の男の声がした。
50~60代の男性2人が襟をつかまれ、キスをさせられている。2人が神出病院の入院患者であることはすぐに察しがついた。
別の動画では、再び同じ男性がベッドに仰向けになり、陰部にジャムを塗られていた。これにもあざ笑う声が入っている。
「ちゃんと吸ってや」
「ちゃんとなめてよ」
「ここ、ちゃんとくわえろって」
別の男性患者がその陰部をなめる様子が映っていた。
看護師らが患者を集団虐待する前代未聞の事件
事件の端緒が女性への強制わいせつだったこともあり、神戸西署には当初、これらの動画も田村が性的目的で撮影したのではないかという見立てがあった。ただ、動画から聞こえる嘲笑の声は、明らかに複数の人物が関わっていることを示しており、わいせつ行為よりも人間の身体をもてあそぶことが目的のように思われた。
神戸西署は県警本部の捜査1課から応援を得て、捜査態勢を強化することを決めた。わいせつ事件をはじめ、殺人、放火、強盗、誘拐、立てこもりといった凶悪犯罪を専門に扱う捜査1課の捜査員を投入し、最先端の捜査技術も駆使して指揮命令系統を一本化させる。
看護師らが患者を集団で虐待するという前代未聞の事件捜査はこうして始まった。