いわゆる日本の芸能界と、音楽業界の違い
のん 音楽に関わってくださるのが自由な大人の人たちばかりで、私が勝手に感じてるだけかもしれないですが、経歴とか年齢に関係なく接してくださるのが新鮮でした。音楽の世界って違うんだなって。
高橋 いわゆる日本の芸能界はそうじゃないのかもしれないけど、ミュージシャンはお互いをリスペクトしていたら歳やキャリアは関係なくプレイできるんですよ。最近はデータのやり取りで済むようになったけど、やっぱり現場でコミュニケーションしながら音楽をつくっていくのは大事でね。この人と一緒に音楽がやりたいという意識が何かを生んでいく。
のん そうですね。人と関わることで自分の発想もどんどん変わっていったし、私のギターも褒めてくださったり、とにかくみなさん優しくて。
高橋 自分でレーベル(「KAIWA(RE)CORD」)をつくって、音楽をはじめたのんちゃんにエールを贈る気持ちがあるんだと思いますよ。
のん 幸宏さんが私のインスタをフォローしてくださっていると聞いて驚いたし、すごく嬉しかったんです。私も幸宏さんの魚釣りしているインスタを見てます。
高橋 その後も、のんちゃんのサウンドプロデュースを務めている飯尾(芳史)くんを通じて、「今、アルバムはどのぐらい進んでんの?」って進行状況を聞いたりしていたんだよね。僕の周りは、みんな気にしていた。
のん ありがたいです。去年からレコーディングを始めて、ようやくアルバムが完成しました!
高橋 僕も『あまちゃん』は観ていましたけど、坂本龍一くんほどではなくて(笑)。教授はホントに熱心に観ていたみたいで、のんちゃんのインスタにもしょっちゅう「いいね!」してるでしょ?(笑)
のん あはは(笑)。この前、坂本さんが代表・監督を務めていらっしゃる東北ユースオーケストラの公演に朗読で参加させていただいて、素敵な経験になりました。
高橋 僕は何といっても『この世界の片隅に』が決定的でしたね。あの主人公すずの声は、のんちゃんしか考えられないと思った。
のん ありがとうございます。声だけの表現をするのは初めてでしたが、『この世界の片隅に』は片渕監督を始めこの作品を観てほしいというみんなの気持ちが一緒になって素晴らしい作品になったと思います。
高橋 僕も若い頃から映画が好きでね。中学3年生のとき『男と女』を観て、あまりにも好きすぎて劇場で18回も観たんです。その映画に出演していて、音楽家でもあるピエール・バルーの大ファンになって、いつかこの人と会える日が来たらいいなと思っていたら、80年代に彼のアルバム(『ル・ポレン(花粉)』)や僕のソロアルバム(『薔薇色の明日』)でその夢が叶った。それ以来、運命論者になったんです。そういうことってない?
のん それで言うなら、私は今度のアルバムがそうですね。幸宏さんをはじめ、尊敬する大好きな方々に曲を提供していただいたので。タイトルを『スーパーヒーローズ』にしたのは、みなさんが私のスーパーヒーローという意味でもあるんです。
(#2に続きます)
写真=榎本麻美/文藝春秋