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強烈な蹴りはできないですよ(笑)

「キックボクシングというと、強烈な蹴りをイメージするかもしれませんが、そんなことはできないですよ(笑)。あくまで日常の運動のために来ています。蹴りの威力がどうのという話ではなくて、私にとっては、週に1回来る場所があるというのがありがたいんです。それに、生井(宏樹)先生とお話をすることで、家族以外と話す機会もあるでしょう。やはりそういう時間は楽しいですよね。

 若い頃は、運動の習慣はありませんでした。私が小学生のころに第2次世界大戦がはじまって、東京で暮らしていた家族は愛知県へ疎開しました。戦争のバタバタで、何か決まった部活動をやるとか、そういうのはなかったですね」

踏み台昇降に取り組む

 事業を興し成功を収めた父のもと、川崎さんは不自由なく育った。だが、高校生になるころ、父は他界。ほぼ決まっていた大学進学も諦めた。これまでの人生を振り返り、現在地をこんな風に俯瞰する。

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「たとえば幼いころ、自宅には割合大きな書棚があって、はしごをかけて登ってそこで読書をするのが趣味でした。しかし今は目が悪くなってしまって、あまり読むことができません。振り返れば、女学校時代にピアノがやりたかったけどいろんな情勢の混乱で先延ばしにしていくうちに結局やらなかったなぁとか、ちょっとした心残りはありますね。

 ただ、今はこうして運動ができることに感謝しています。この年で運動できるというのは、身体が健康であることはもちろん、家族や周囲の理解があるからです。自由にやりたいことをさせてもらえている環境は本当にありがたいと感じますね」

終始楽しそうにトレーニングに取り組む

 最後に、笑顔でミットにキックをいれる川崎さんへ、今後の展望について話を伺った。

「少し前まで右足を引きずりながら歩いていたのに、今は自分の体重を支えてキックをすることができます。未経験だった運動も好きになりました。そうした変化は素直に嬉しく思います。でも、欲はかかないことにしているんです。『これからこうなりたい』というイメージがあるわけじゃなくて、自然体で、今のままずっと続けられたらいいなと思っています」

◆◆◆

 健康維持、そして、人生の新たな楽しみにもつながったキックボクシング。しかし、いったいなぜ町の整骨院は高齢者に向けたクラスを指導するようになったのだろう。そこには生井氏のスポーツマンとしてのキャリア、そして、ふいにかけられたある一言がきっかけになったのだという。