「いいですねぇ!ナイスローキック!」

 ジム生が繰り出すキックを受け止め、明るく声を返す。柔道整復師の生井宏樹氏が代表を務める整骨院「PALLEDO」で開かれる、70歳以上を対象としたキックボクシングコースが評判だ。

 元プロのキックボクサー(J-NETWORKライト級1位)という肩書きも持つ生井氏は、なぜ整骨院を開業し、さらには高齢者に向けた指導を始めたのか。これまでの経緯と胸に秘める思いを聞く。

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整骨院とキックボクシングジムを営む生井宏樹氏

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整骨院のオプションに「パーソナルキックボクシング」を加えたきっかけ

「整骨院を開業した当初は、現在のようにキックボクシングジムを併設したり、まして高齢者クラスを設置しようとはまったく考えていませんでした。

 そもそも、大学時代にキックボクシングを始めたのも、『社会人になったら趣味なんてしていられないだろうから、今のうちにやろう』という駆け込みでした。プロ資格を得ることはできましたが、プロキックボクサーといっても、それで食べていける人は限られます。そこで、先輩から『手に職をつけたほうがいい』と言われて、柔道整復師資格の勉強を始めたんです。その場その場の思いで行動しがちなんでしょうか」

パンチを受ける生井氏

「現在の、整骨院とキックボクシングジムを組み合わせたスタイルを確立するきっかけになったのは、整骨院のオプションメニューとして『パーソナルキックボクシング』を入れたことです。それほど広い店舗ではなかったんですが、施術台をうまくどかせば、何とかキックボクシングができるんです。

 当時は路面店だったので、道行く人から整骨院内でキックボクシングが行われているのが見える仕様になっていて、少し話題になりました(笑)」

 徐々に人気オプションになっていったパーソナルキックボクシングだが、もともと高齢者の方をターゲットにしたものではなかったという。