別にキックボクシングじゃなくてもいい
「平均寿命の延伸は素晴らしいことですが、本当に大切なのは健康寿命が伸びていくことですよね。健康を維持するために適度な運動が必要なことは疑いようがなく、こうしたジムに通うことでコミュニティができて活力になるのではないかと思います。
キックボクシングジムを経営している身で言うのもなんですが、健康に資するスポーツなら、別にキックボクシングじゃなくてもいいとは思うんですけどね(笑)。ただ、その選択肢のなかにキックボクシングがあってもいいかなとは感じます。
現役を引退する世代、ちょうど60代後半以降だと思いますが、まだまだ元気でエネルギッシュな人はたくさんいます。年齢を重ねても生きていくのが楽しいと思える人生を送る。その一助になれば素敵ですね」
多くの高齢者に運動の楽しみを与えてきた生井氏。これからのビジョンはあるのだろうか?
「確固たるものはないんですよ。これまでも、自分が『絶対にこれをやろう』と思って突き進んだわけではないんです。ただその場その場で、『いま自分に求められていることは何かな?』と感覚を研ぎ澄まして、動けるようにしたいとは思っています。“流れ”を感じながら、自分がやるべき方向性がどんなところなのか、それを見極めて人の役に立つ仕事をこれからもしていきたいです」
◆◆◆
生井氏は肩の力を抜き、流儀にとらわれないことで自らの使命ともいえる仕事に出会った。未来に対して過大な理想を描かず、ただ目の前にある日常を全力で楽しもうとする。指導者である生井氏にも高齢者のジム生にも共通するスタンスだ。人生という長い旅路を心身ともに健やかに過ごすためのヒントは、そんなところにあるのかもしれない。