「X子はこんなタイプの男と付き合っていたのか」
刑務所に収監されている人物の聴取は、午前中と、午後は16時までと決められている。刑務所は法務省の管轄であるため、警視庁から申請をした上で取調べが行われる。
その日、俺は宮崎空港からレンタカーを借り、3人の捜査員とともに宮崎刑務所へ向かった。
季節は夏の終わりで、少しずつ涼しくなってきた頃だった。市内から車で1時間ほど、のどかな田舎道を走った山の中に宮崎刑務所はあった。
刑務所に収監されている人間は、基本的に礼儀正しくなる。
だから、看守に連れられてやってきた丸刈りのYも、
「入ります!」
と、声を上げて俺たちの前に座った。
俺の第一印象は、
(本当にX子はこんな種雄君とは真逆のタイプの男と付き合っていたのかな)
と、いうものだった。坊主頭のYは何とも素朴な雰囲気で、X子のような派手で美人な女とは合わないように感じたからだ。
X子はどういう人物なのか
俺がX子の調べ官をしていることを伝えると、
「ああ、そうですか。あの女は大変ですよ。したたかです」
と、Yは言った。
言葉遣いは丁寧で、ヤンチャをしていた男という感じもしない。
俺は、まずはX子がどういう人物であるかを探ろうと思った。
「ああ。そうなんだ。まあ、それは気をつけるけど、彼女はどういう性格なの?」
「うーん……。気の弱いところもありますね」
Yの供述は興味深いものだった。
事件があった日、YはX子の自宅近くのコンビニに車で行き、手袋を買った。だが、遺体を見ることを躊躇して、そのまましばらくコンビニの前にいたという。手袋を購入したのは、遺体に触れることを考えたからだろう。
その後、Yが部屋に到着すると、確かに種雄さんの遺体があった。X子の背中に血が付いていたため、「血が付いているから脱げ」と服を着替えさせた上で、「朝方になったら警察に電話をして、朝起きたら死んでいましたと言え」と助言したという。