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「あの女は鬼畜です」「夜中に電話で『刺しちゃった』と…」木原誠二氏妻の元夫“怪死事件”に新証言…“伝説の取調官”が掴んだ驚きの事実とは

『ホンボシ 木原事件と俺の捜査秘録』より #3

2024/07/07

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 社会, 読書

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「X子はこんなタイプの男と付き合っていたのか」

 刑務所に収監されている人物の聴取は、午前中と、午後は16時までと決められている。刑務所は法務省の管轄であるため、警視庁から申請をした上で取調べが行われる。

 その日、俺は宮崎空港からレンタカーを借り、3人の捜査員とともに宮崎刑務所へ向かった。

 季節は夏の終わりで、少しずつ涼しくなってきた頃だった。市内から車で1時間ほど、のどかな田舎道を走った山の中に宮崎刑務所はあった。

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 刑務所に収監されている人間は、基本的に礼儀正しくなる。

 だから、看守に連れられてやってきた丸刈りのYも、

「入ります!」

 と、声を上げて俺たちの前に座った。

 俺の第一印象は、

(本当にX子はこんな種雄君とは真逆のタイプの男と付き合っていたのかな)

 と、いうものだった。坊主頭のYは何とも素朴な雰囲気で、X子のような派手で美人な女とは合わないように感じたからだ。

X子さんの取調官を務めた佐藤誠氏 ©文藝春秋

X子はどういう人物なのか

 俺がX子の調べ官をしていることを伝えると、

「ああ、そうですか。あの女は大変ですよ。したたかです」

 と、Yは言った。

 言葉遣いは丁寧で、ヤンチャをしていた男という感じもしない。

 俺は、まずはX子がどういう人物であるかを探ろうと思った。

「ああ。そうなんだ。まあ、それは気をつけるけど、彼女はどういう性格なの?」

「うーん……。気の弱いところもありますね」

 Yの供述は興味深いものだった。

 事件があった日、YはX子の自宅近くのコンビニに車で行き、手袋を買った。だが、遺体を見ることを躊躇して、そのまましばらくコンビニの前にいたという。手袋を購入したのは、遺体に触れることを考えたからだろう。

故・安田種雄さん (遺族提供)

 その後、Yが部屋に到着すると、確かに種雄さんの遺体があった。X子の背中に血が付いていたため、「血が付いているから脱げ」と服を着替えさせた上で、「朝方になったら警察に電話をして、朝起きたら死んでいましたと言え」と助言したという。

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