秘密の暴露
ところが、Yにとって予想外だったのは、朝までの数時間で隠蔽工作をしようとしていたとき、玄関から唐突に大きな物音がしたことだった。
深夜3時過ぎのことである。
そのときに現れたのは、種雄さんに貸したハイエースを取りに来た種雄さんの父親だった。2階の暗闇の中で横たわっている種雄さんに「そんなところで寝たら風邪をひくぞ」と声をかける。そして、電気を点けたところで種雄さんが死んでいるのを発見する。
父親の登場に慌てたYは、子供部屋のカーテンに咄嗟に身を隠したという。
「突然来たからびっくりしましたよ」
と、Yは「秘密の暴露」的な供述をした。
種雄さんの父親は警察の調べに「玄関の鍵が開いていた」と語っていたが、それはYが部屋に入った後だったからである。
鬼畜ですね、あの女は。
俺が宮崎に行ったとき、Yはこうした事件の日の出来事を、すでに「裏付班」の捜査員にしていた。だが、「カーテンの後ろに隠れていた」という供述は、俺が面会したときに初めて出てきたものだった。
「(種雄さんの)オヤジさんが来たとき、お前はカーテンの後ろに隠れてたんだな……」
俺はベテラン捜査員の「推理」についても、あらためてYの反応を見るために聞いてみた。
「ナイフに粘着テープはなんで巻いてあったの?」
「種雄が覚醒剤をやってたからじゃないですか」
「あれはさ、たぶんX子がお前のことを犯人にするつもりだったんだよ」
「ええ! そうなんですか。鬼畜ですね、あの女は。でも、そういうところがありますよ、あいつには」
「へえ、そうなんだ」
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