裁判官たちに《wwwww》の意味を説明
――10年前と今では、裁判の進め方も変わりましたか。
清水 もしかすると、裁判で勝てるラインは、ゆるくなったかもしれません。
――10年前より勝てるようになった?
清水 勝てるというか、話が通じやすくなりました。2010年頃までは、ネットの誹謗中傷の判例がわずかだったので。
――そうか。そういう時代ですよね。
清水 ええ。当時の裁判官は、ネットの知識がゼロに近かったんです。ところが、誹謗中傷はネットスラングを使うケースが多くて。
――笑いを意味する《w》などは当時からありましたね。でも、裁判関係者にとっては「これは英語のダブリューだ」と?
清水 そうですね。《w》がひとつならまだ説明は簡単なんですが、《wwwww》のように連続する場合、侮辱・嘲笑的な意味合いが加わるじゃないですか。
ですから、裁判のたびに資料をつけて、「この言葉にはこういう意味がある」など、かなり細かく説明しなくてはいけなくて。
「ハッシュタグとは…」延々と説明
――裁判で、説明するのに苦労したネット用語はありますか。
清水 ハッシュタグですね。ニコニコ動画だったと思いますが、中傷的な言葉のハッシュタグが付けられてたんですよ。
でも裁判で、「ハッシュタグとは何か」を説明するのがとても大変で。
――2010年頃にハッシュタグの意味を理解させるのは、大変そうです。
清水 そのときの裁判官は高齢の女性だったんですが、書面で何回も説明しても、理解してくれなくて。
ハッシュタグって、自分で言葉を選んで投稿するものじゃないですか。ところが、その裁判官は「ハッシュタグは《検索》のためのタグだから、《投稿》とはいえない」などチグハグなことを言いだして。「いやいや、違うでしょ」と。
――(笑)。
清水 話が通じないんです。結局、こちらの言い分は何も理解されないまま、その裁判は負けました。そんな頃に比べたら、今はややマシですね。