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 SNSで無理筋な開示請求をする人たち

――ところでSNSには、すぐに「これは名誉毀損だ」「情報開示請求をする」など、はためには無理筋な主張をする有名アカウントや弁護士がいます。この人たちの狙いは何でしょうか。

※画像はイメージです ©iStock.com

清水 特に狙いはないと思います。そういったアカウントは「不快な書き込みはすべて開示請求したい。実際に開示できる/できないは問わない」という思いがあるのではないかと。

 で、それを受ける弁護士は、「依頼はどんな内容でも断らない。裁判所が依頼者の主張を認めなくてもいいので、とにかく手続きを進める」というスタンス。私とはタイプが違うな、と思います。

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――清水さんは、無理筋な依頼は受けないですか。

清水 私は、自分が対応できそうな案件だけを受けています。というのは、相談の中には、どうやっても勝てる見込みがないものがあるんですね。

――先ほどの、“結婚詐欺師が「詐欺師」と言ってきた相手を訴える”ようなケースですね。

清水 ええ。弁護士に依頼して裁判を起こすと、依頼者はそれなりのお金と時間を失います。

 ですから、裁判で負ける可能性が高い案件を受けるのは、依頼者も弁護士も不幸になると思っています。

弁護士と依頼者が一体化してはいけない

――なるほど。清水さんはドライな弁護士という印象でしたが、誠実なんですね。

清水 私はフラットなつもりなんですよ(笑)。

Ⓒ文藝春秋

――お話を伺う前は、「どんな依頼でもすべて受ける」弁護士の方が人情派かと思っていましたが、今はドライな清水さんがいい人に見えてきました。

清水 ……やっぱり、弁護士は“代理人”であることに意味があるんですよ。弁護士が依頼者と同化すると、代理人の意味がなくなってしまう。

 依頼者の主張をくみとりつつ、第三者として冷静に状況を見て、「よい・悪い」の判断を提供する仕事だと思うんです。

――他人目線だからこそ、その人のためになる助言ができる?

清水 そう思っています。だから、マンガタイトルの「しょせん他人事」というのは、すごく冷たく聞こえるかもしれませんが、そうではなくて。

「依頼は“他人のこと”として、自分から切り離したうえで、きちんと考える」という意味合いがあります。

Ⓒ文藝春秋

――なるほど。……すみません、ずっと気になっていたんですが、清水さんの後ろに掛け軸のようなものがありますね。

 マンガでは、保田は事務所に《他人事》と書かれた掛け軸を飾っていますが、清水さんもやっぱり同じ言葉を?

Ⓒ左藤真通・富士屋カツヒト・清水陽平/白泉社

清水 あ、この掛け軸に書いてあるのは、事務所のモットーです。

Ⓒ文藝春秋

 ただ、マンガ家さんが取材に来たときに、これを見てヒントにしたのかもしれません。

――残念。ちょっと期待していました。

清水 マンガは今、だいぶ知られてきたようで。ネットの誹謗中傷、炎上のさまざまな例を載せているので、誰が読んでも面白いと思います。

 でも最近、いろんな人に「保田弁護士のモデルなんですよね」と言われて。印象がひとり歩きしている気がしますが、私はあそこまで極端な性格ではないですよ。そこは自分ごととして主張しておきます(笑)。