幼い頃から自身の性自認に悩んでいた元女子プロレスラーの石野結氏(リングネーム花月)は競技を引退後、性別適合手術を受け、男性として新たな人生を歩みだした。周囲の反応や手術、性別変更にあたっての各種手続き……。さまざまな課題を彼はどのように乗り越えてきたのか。

 ここでは石野氏が自身の半生を綴った著書『元悪役女子プロレスラー、男になる!』(彩図社)の一部を抜粋。手術後に感じた苦痛・困惑について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む

新人レスラー時代。のちにヒールユニット「大江戸隊」でお世話になる木村響子さんとも対戦した(2009年)

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手術は無事に大成功

 麻酔から覚めたときには、すべてが終わっていました。

 乳房と子宮を切除する、5時間に及ぶ手術でした。

 ついに身体が変わった! と感動するかと思っていましたが、術後はすぐに自分の身体は見られなかったし、全身麻酔のせいで頭がボ~っとしていたので、あまり実感が湧いてこなかったですね。

 それからは、手術のことを話していた友だちや関係者にLINEを送ったりして過ごしていました。痛みもなかったし、「ぜんぜん余裕!」って感じでした。

手術直後の筆者。麻酔がまだ効いていたので、このときは痛みはまったくなかった

 しかし! 麻酔の効き目が切れてくると、猛烈な痛みがやってきました。

 自分の場合は、一度に胸と子宮をとったので、面積的に大きい胸が痛むのかと思いきやそうではありませんでした。痛かったのは、むしろ子宮があった腹部でした。

子宮の切除は「生理痛の痛みの百倍くらいの痛み」

 子宮の切除は内視鏡を使って行ったそうですが、一言で表現すれば“重すぎる生理痛”といえば伝わるでしょうか。女性の方なら理解していただけると思いますが、あの生理痛の痛みの百倍くらいの痛みが腹部を襲ってくるのです。しかもその痛みは、時間が経つごとに、それこそ秒単位で痛みが増していく感じで、あまりの痛みで脂汗が出てきました。これは耐えられない……、手術当日のみ入院していたので、ナースコールをして即効性のある痛み止めを打ってもらってなんとか落ち着きました。

 腹部の痛みは、点滴の効果もあって夜には治まってきましたが、今度は胸部の違和感に悩まされます。手術後、胸にはドレーンが挿さっていました。切除した箇所に溜まる体液を外に流すためのチューブで、胸の脇の方に挿していたのですが、これがなんとも気持ち悪く、体液が出なくなるまでの5日間、挿しっぱなしが続いたのには参りました。しかも、その間、外に出た体液の量を自分で量って、毎日クリニックに報告しなくてはならないんです。

手術翌日の様子。切除した乳房の付近にドレーンが挿入されている

 ちなみに、今回の手術で一番痛かったのは、このドレーンを抜いた後でした。