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「パートナーの女性はどう思っているのだろう?」性別適合手術を受けた元女子プロレスラーが男になって気づいた“最大の困り事”とは

『元悪役女子プロレスラー、男になる!』より #2

2022/07/10
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 ちなみに、男性から女性への性別適合手術の場合はペニスを切除することによって、尿道を本来の女性と同じ位置に移動させるために、手術に要する時間や工程、そして費用もかなり違ってきます。また、乳房を新たに作るための費用もかなりのものだと聞きます。その点に関しては担当医とご相談の上、ご確認いただけますと幸いです。

男性になって戸惑ったこと

 身体に変化が起きたことで戸惑ったことも、もちろんあります。

 ドキュメント番組のオンエア前に性別変更を知らせていない方に会う機会があったんですが、そのとき、すでにホルモン投与で声が変わり始めていたんですね。

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「あれ、声が変じゃない? 風邪でもひいたの?」

 その方に心配されてしまいました。

 ホルモンを投与すると、声は低く、太くなります。そのときはドキュメンタリー番組の兼ね合いで性別適合手術のことはお話できなかったので、「いや~、最近、お酒を飲み過ぎちゃって。そのせいですかね~」なんて笑ってごまかしていました。

 自分はホルモンがよく効いた方だったみたいで、1回目の投与からすぐにヒゲが生えてきました。

「男になったら絶対にヒゲを生やす!」って思っていたので、初めて鏡でヒゲを見たときは「おぉ~、きたきた!」って嬉しかったですね。大事なヒゲなので、それから大切に大切に伸ばしてたわけですが、カミングアウトをしていない人に会うとなると、さすがに生やしっぱなしでいくわけにはいきません。

プロレス観戦の会場で

 自分はプロレスを嫌いになったわけではないので、引退後も機会があるとプロレスの観戦によく出かけていました。自分でチケットを買って、お客さんとして観ると、現役時代にはわからなかった色々なことに気づけておもしろいんです。

 あくまでお客さんとしてきていますので、基本的にはひっそりと観るのですが、時々、関係者の方に見つかってしまうんですね。

 それで水分を補給しようと、マスクを外したときに顔を偶然見られたりして、「あれ?」という感じに。すぐに気づいて慌ててマスクを上げて事なきを得ましたが、明るい場所だったら、きっとヒゲがバレていたと思います。

 このときはマスクをしている状況だったからよかったですが、ときには会食など人前でマスクを外さなければならないときもあるわけで、そういうことが予想される場に出る際には泣く泣く髭を剃りました。「せっかく、ここまで伸びたのに……」と思いながら剃るのは切なかったですね。

引退試合は師匠の笹村明衣子選手が相手を務めた ©MASAHIKO

 髪型についても、本当は昔からガッツリ短くしたかったんです。だけど女性だったときは世間体もあったので、あくまでショートの範囲でした。でも、男になったら誰にも遠慮はいりません。好みの髪型にできるので、いまは“男髪”をエンジョイしていますね。