2022年5月14日、実力と人気を兼ね備える悪役レスラーとして活躍した花月選手が、性別適合手術を受けたことを自身のYou Tubeチャンネルで発表した。同氏は現在は石野結と改名し、戸籍上も男性として人生を送っているが、手術に至るまでの経緯、そして当時の心境はどのようなものだったのだろうか。

 ここでは石野氏が自身の半生を綴った『元悪役女子プロレスラー、男になる!』(彩図社)の一部を抜粋。性別適合手術を受けるにあたり、自身の性自認について両親へカミングアウトを行った際の一部始終を紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

現在の石野さん

◆◆◆

ADVERTISEMENT

性別適合手術の高い壁

「よし、男になろう!」

 2020年の夏の終わりにそう決意しましたが、実際に手術を受けるまでには、乗り越えなければならない壁がいくつもありました。

 そもそも、なぜ手術をしなければならないのか。その理由をここで改めて整理しておこうと思います。

 性別適合手術をしなければならない理由、それは手術をすることが戸籍上の性別を変更する条件の一つになっているからです。

 戸籍上の性別変更には、いくつか満たさなければならない条件があります。

 2004年に施行された「性同一性障害特例法」では、その条件に、性別適合手術のほかに「18歳以上であること」、「現在結婚していないこと」、「現に未成年の子どもがいないこと」、「変更する性別に見合った身体の外観要件などをクリアしなくてはならないこと」などを定めています。

 そのように、戸籍上の性別変更には必要な性別適合手術ですが、受けたいからといってすぐに受けられるわけではありません。

 事前に精神科で診察を受け、本当に手術が必要なのかどうかを判断してもらう必要があります。しかし、自分にはその前に、どうしてもやっておかなければならないことがありました。それは親への“正式なカミングアウト”です。