両親に手術の許可をもらう
初めて彼女ができたとき(第二章参照)、両親には自分の性的指向は伝えていました。母は意外だったようですが、父は以前から薄々感づいていたようでした。でも、そういう話をしたのはあのときだけで、自分の性認識は男性で、手術をして男になろうと思っていることはまだ伝えていませんでした。
自分が手術をするのは、両親に許可をしてもらったときだけ。
夏に手術をすると決意してから、そのことだけは決めていました。
しかし、いざ言おうとすると、ためらってしまうんですよね。五体満足に生んでもらった身体にメスを入れて変えてしまおうというわけですから、母は悲しむんじゃないか。そう思うと、なかなか言い出せなかったです。
どうして男になりたいのか、もう一度、じっくり考えてみました。
出てきた答えは、「両親のような家庭を持ちたいから」でした。
自分の家はとにかく温かい家庭でした。兄弟が多いから、いつもうるさいくらいに賑やかで、笑いが絶えなくて……。両親は子どもたちの意思を尊重してくれて、間違った道にいかないように静かに見守っていてくれました。
もし男になれたら、自分もそういう家庭を持ちたい。好きな女性と結婚して、子どもがいて、両親のように温かく育てたいと思ったんです。
2度目のカミングアウト
2020年11月、両親に2度目のカミングアウトしました。前回は意図せずにカミングアウトするかたちになってしまいましたが、今回は自分の口で直接伝えます。
自分の性別への違和感がずっとあったこと。誰にも相談できなかったけれど、ずっと悩んでいたこと。気持ちが抑えられなくなった今に至るまでの経緯。だからこそ、手術を受けて戸籍も変えて正式に男性としてこれからの人生を歩んでいきたいということをすべて時間をかけて話しました。
たとえ手術をして女性と家庭を持ったとしても、現実問題として子どもは望めないかもしれません。でも、相手の女性が希望するなら養子縁組を頼ろうと思っていることも伝えました。
今の父親は母の再婚相手であり、生みの親ではありません。
だけど、誰よりも自分たちのことを信頼してくれて、認めてくれて、守ってくれて、そして、ここまで育ててくれました。自分の血が入っていない子どもであっても、愛情を持って育てること、そして人生を歩ませることができるのは、父が教えてくれたことです。だから、将来、たとえ養子縁組だとしても、子どもができたら2人にしてもらったように育てて素晴らしい家庭にしたい。そんな想いを伝えました。