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中国、ウクライナ、アメリカ…「連邦議会襲撃事件」を予言した政治学者が語る“内戦の起きやすい国”とは?

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2021年1月6日、ドナルド・トランプ氏の大統領選敗北を認めない支持者が米国会議事堂を占拠し、警官ら5人が死亡した。この「連邦議会襲撃事件」を“予言”していた政治学者が、カリフォルニア大学サンディエゴ校・政治学教授のバーバラ・ウォルター氏だ。(聞き手 ・奥山真司・戦略学者)

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CIAの「政治的不安定性タスクフォース」

 ──『アメリカは内戦に向かうのか』という衝撃的なタイトルのご著書は、日本語版(井坂康志訳、東洋経済新報社)も出ていますが、なぜこの本を書かれたのですか。

 ウォルター 実は、「米国の内戦」に関する本を書くことになるとは、自分でも思いもよりませんでした。

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 私は政治学者として世界中の「政治的暴力」を研究してきました。1990年からは「内戦」を研究しています。2017年から2021年にはCIAの「政治的不安定性タスクフォース」のメンバーに加わりました。どの国が政情不安や政治的暴力に見舞われる可能性が高いかを「モデル」を使って予測するのです。

バーバラ・ウォルター氏 ©delmarphotographics

 タスクフォースは2種類の人々から構成されていました。紛争専門家とデータアナリストです。紛争専門家が内戦のリスクを高める「変数」をデータアナリストに教えて「モデル」を作成するのです。

 そこで過去の政治的暴力や内戦に関する研究を調べ上げた結果、38個の変数を見つけました。統計的に一度でも有意であると判断されれば、とりあえず「変数」としてカウントしたわけです。貧困、民族多様性、人口規模、領土の大きさ、不平等、腐敗、地形(湿地帯や山岳地帯が多いかどうか)などです。

バーバラ・ウォルター氏の著書

 さらにアナリストたちは、「パーシモニアス(倹約的な)モデル」、すなわち予測値が最も高く変数の数が最も少ないモデルに辿り着くまで試行錯誤を繰り返しました。その結果、「本当に重要なのは二つの変数だ」ということを発見したのです。しかもそれは私たちが予想していた変数ではありませんでした。

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