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「女性として傷つく部分があったら…」奈緒が映画「先生の白い嘘」で誰よりも早く“謝罪”した背景〈多くの性的シーンが〉

7時間前
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「製作陣としては予期せぬ“炎上”でした。このことがどこまで影響したのか、初週・2週目と国内の興行ランキングでトップ10に入らなかった。今後の映画界にとって、大きな課題として残りました」(映画会社関係者)

 7月5日に公開された映画「先生の白い嘘」。

 原作は「月刊モーニング・ツー」に連載された鳥飼茜氏の同名漫画で、主演に奈緒、そして風間俊介や三吉彩花、猪狩蒼弥(HiHi Jets)といった人気俳優たちをキャスティングした注目の作品だった。

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奈緒(事務所HPより)

「間に人を入れたくなかった」

 ところが公開前日にウェブメディア「ENCOUNT」で、本作の監督・三木康一郎氏のインタビューが公開され、SNSを中心に監督の発言が瞬く間に拡散され問題視されたのだ。

〈奈緒さん側からは『インティマシー・コーディネーター(性描写などの身体的な接触シーンで演者の心をケアするスタッフ)を入れて欲しい』と言われました。すごく考えた末に、入れない方法論を考えました。間に人を入れたくなかったんです。ただ、理解しあってやりたかったので、奈緒さんには、女性として傷つく部分があったら、すぐに言って欲しいとお願いしましたし、描写にも細かく提案させてもらいました。性描写をえぐいものにしたくなかったし、もう少し深い部分が大事だと思っていました〉(2024年7月4日「ENCOUNT」)

「本人がインティマシー・コーディネーターを希望したのに、起用しなかったという事実。そしてそのことに問題があると思わず、インタビューで答えてしまった三木監督と作品への批判が巻き起こりました。いまの時代、炎上したのは当然だと思います。取材・執筆担当者はベテランで、元々スポーツ紙の映画担当記者でした」(前出・映画会社関係者)

「歪んだ人間関係」と「性犯罪」、そして「男女の性」

 インティマシー・コーディネーター(IC)は、ヌードや性描写などがある場合に俳優と制作サイドの意思疎通をはかり、現場の安全を守ることを目的とした存在だ。ICがいることで、俳優が現場の空気に流されずに希望する条件を言いやすくなったり、逆に監督側のリクエストを丁寧に伝えることに一役買ったり、安心して性的なシーンの撮影を進めるために必要とされている。

 アメリカに本部を置く団体が養成プログラムを修了した人に資格を認定しているが、日本国内で活動している有資格者は、まだ片手にも満たないという。

2020年、第33回東京国際映画祭での奈緒 ©AFLO

 そして、この作品についても少し説明が必要だろう。

 奈緒が演じる主人公の高校教師は、三吉彩花演じる親友の交際相手(風間俊介)からレイプを受ける。それが性的な初体験でもあった主人公は、傷つきながらも、被害を訴えることも断ち切ることもできず、何年にもわたって関係を続けている。男からの脅しがあり、親友への裏切り行為でもあり、主人公が望んだ関係性でないことは明らかだ。

 そして心療内科に通いつつ高校での勤務を続けるが、ひとりの男子生徒(猪狩蒼弥)の存在が、あるきっかけから主人公の中で大きくなっていく……という「歪んだ人間関係」と「性犯罪」、そして「男女の性」について描かれた作品だ。