※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2024」に届いた原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】南別府 学 読売巨人軍

東京生まれ・松坂世代のサラリーマン。小学生時代は巨人が負けて号泣したこともあるほどの巨人ファン。近年は残業中もラジオで試合をチェックし、秘蔵の巨人ノートをつけている。文春野球フレッシュオールスターは4度目の本戦出場。今回こそは優勝を狙う。

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 1990年8月、広島のキャッチャー達川光男が試合中にコンタクトレンズを落とし、両チームの選手たちが総出でそれを大捜索した「達川コンタクトレンズ事件」。皆が腰をかがめてコンタクトレンズを探す姿はあまりにも滑稽で、記憶に残る珍プレーとしてプロ野球史に刻まれている。

 あれから30年余りが経過した昨年8月。コンタクトレンズにまつわる珍事件が再びプロ野球史に刻まれたことはあまり知られていない。

コンタクトレンズを付けずに試合に臨んだ原監督

 2023年8月12日。巨人対DeNA戦で事件は起こった。

 この試合までの巨人は、首位阪神と12ゲーム差。3位DeNAとも3ゲーム差を付けられる苦しい状況だった。直近の4試合では4連敗し、2年連続のBクラスが目の前に迫っていた。

 これ以上負けることが許されない大事な試合。そんな状況で巨人・原監督(当時)はなぜか普段付けているというコンタクトレンズを装着せずに試合に臨んだ。

「今日は少しぼんやり風景を見てみようと」

 そう語った原監督の“裸眼采配”は成功した。ヤケクソにも思える捨て身の作戦が功を奏し、勝利を収めたのである。連敗を4でストップさせて手応えをつかんだ原監督は「明日もコンタクトを入れずにいってみようかな」と上機嫌だった。

巨人・原辰徳前監督 ©時事通信社

“2023年の原巨人”最大の謎を追う

 言うまでもないが、現代は情報化社会である。

 現代人が1日に触れる情報量は、平安時代の一生分とも言われるほどだ。

 情報がありすぎて判断を見誤る……私にもそんな経験はあり、当時の原があえてコンタクトレンズを付けず、視覚から入る情報を減らして采配に臨んだ意図は何となくわかるような気がした。

 しかし、だからといって指揮官の視界がぼやけていて果たしてチームは機能するのだろうか。単純にそんな疑問が頭をかすめた。

 大事な試合にあえて裸眼采配を敢行した本当の理由はなんだったのか。

 コンタクトレンズ愛用者である私は、裸眼で球場に行くことを決意した。

 私自身が“裸眼観戦”し、裸眼采配の謎を解明しようとしたのである。