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福田前次官の佐川評は「言葉遊び」だったのか

 それから20年。大蔵省から財務省となり、ふたたびハレンチ事件が明るみに出る。35年に及ぶ出世争いを制して事務次官になった福田氏のセクハラ問題である。

 これを白日のもとに晒した週刊新潮4月19日号掲載の「ろくでもない『財務事務次官』のセクハラ音源」と翌26日号の「『福田次官』の寝言は寝て言え!」。ここで、自宅近くのバーに呼び出した女性記者あいてに「今日ね、今日ね……抱きしめていい?」「おっぱい触っていい?」とセクハラを繰り出す合間に、福田氏は同期をネタにしている。

「佐川が辞めたあと証人喚問までの間にちゃんと床屋行ってた。それが話題になっている。人生であそこまで見てもらえる機会ないもんな。一世一代の大舞台だもんな」

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「佐川、身長低いの知っている? 証人喚問でさらに株が上がっているでしょ」

佐川宣寿・前国税庁長官 ©文藝春秋

 その後、ご本人も佐川氏なみに見てもらえる機会を得ることになるのだが、こうして笑いのネタにするのも同期の仲ゆえの「イジリ」か、それとも出世争いの勝利者による嗤笑か。はたまた得意の「言葉遊び」であったのか。

「おれたちもう、終わっちゃったのかなあ」

 福田氏がセクハラなら、佐川氏は佐川氏でパワハラで週刊誌の記事になっている。たとえば週刊新潮2017年7月20日号では、とにかくよく怒鳴ると評判で、そんなこともあって省内に出回る「パワハラ番付」では常連になっているとある。「五十七年組」でいえば片山さつきも職員時代から前頭筆頭に名前が挙がっており、退職後も<おかみさん>として掲載されたという。

財務省 ©文藝春秋

 そんなこんなの福田氏&佐川氏であるが、次官・長官までいけば、通常は、その後に「天下りライフ」が待っている。映画「キッズリターン」のラストシーンよろしく、「おれたちもう、終わっちゃったのかなあ」「ばかやろう、まだ始まっちゃいねえよ」なのかもしれない。

 その昔、大蔵省が一般会計予算の語呂合わせを発表する風習があった。どんなものだか紹介すると、たとえば1973年度は「いい世に走れ73年」(14兆2840億7300万円)、1979年度だと「さあやろういい世に向かって」(38兆6001億4300万円)といった具合。両年ともオイルショックでひどい世になるのだが。

 くだんの1982年度は「よく胸張れや、皆」( 49兆6808億3700万円 )であった。なんだか退官するふたりからの、残る職員たちへの挨拶みたいで、いまにしてみれば皮肉な話である。

(注)別冊宝島Real『財務省の闇』