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星野仙一と松坂大輔のDNAを受け継ぐ男、中日・柳裕也の挫折と復活

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/05/04
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完封勝利のウイニングボールを大切にしなかった理由

 しかし、この男はやると思った。

 4月10日。ナゴヤドーム。中日・ヤクルト1回戦。「前回はうまく投げようとし過ぎたので、とにかく腕を振ることを心掛けました」と柳。その言葉通り、小気味良い投球を披露。3対0。見事な初完投初完封勝利だった。

 マウンドで歓喜のハイタッチ。その輪の中に京田がいた。携帯電話には松坂から「ナイス完封!」とLINEが来ていた。

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 しかし、あの人はいない。

 ヒーローインタビューで柳はウイニングボールをどうするか尋ねられた。しばらく間を置き、「分からないです」と言葉を濁した。

 ラジオの放送席にいた私は想像した。「きっと星野さんの写真の前に飾るんだ」。

 後日、柳を直撃。「ウイニングボールですか? しばらくナゴヤドームのロッカーに置いたままでしたよ」と笑い飛ばす。「さすがに今は寮の部屋にありますが、特別飾ったりはしていません」。扱いは極めて淡白だった。

「星野さんの写真の前に飾っていないのかな?」「いいえ。確かに完封は嬉しいですけど、まだプロで2勝ですよ」。柳は静かに答えた。そして、続ける。「もっと勝ちたいですし、勝つつもり。2勝目くらいで飾っていたら、怒られますよ」。

 余韻に浸っている様子は微塵もなかった。「まだ星野さんに認めてもらえる投手ではありません。これからも結果を出さないと」。

 挫折を味わったドラフト1位は様々な刺激を体中に受けた。そして、今、ひたむきに進んでいる。前へ。前へ。

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