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「毎晩、私の身体の上に血まみれの女が……」身の毛もよだつ恐怖体験を語る相談者を救った臨床心理士の意外な正体とは

「毎晩、私の身体の上に血まみれの女が……」身の毛もよだつ恐怖体験を語る相談者を救った臨床心理士の意外な正体とは

2024/07/26

source : 文春コミック

genre : エンタメ, 読書

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 幽霊は実在するのか? “いる派”・“いない派”に分かれ、長年論争が繰り広げられてきたが、どちらも決定打に欠け、いまだに決着はついていない。しかし、もし“いない”派の人間が幽霊が“視える”のに嘘をついているのだとしたら――。

その霊、幻覚です。』の主人公、臨床心理士の泉宮一華は、普通のカウンセラーではない。心霊体験によって心に傷を負った相談者に心理学の観点から幽霊を否定し、回復へと導く心霊専門カウンセラーなのだ。例えば、血まみれの女性が毎晩身体の上に乗ってくるのが見える、という女性には次のように説明する。

――人間の脳は睡眠中に膨大な記憶を整理するため、その過程で曖昧な記憶の掛け合わせが起きることがある。例えば、不安や恐怖をトリガーに何気なく観たホラー映画予告の記憶が掘り起こされ、さも現実のような顔で幻覚として現れることがあるのだ。

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 かように理路整然と話す彼女を見ていると、気持ち良いくらいの納得感が湧き起こり、思わず“いない派”に白旗をあげたくなる。ところが、実はこの彼女“視えている”のだ。

 というのも、一華は高い霊能力を持つ由緒ある寺の家系の生まれ。生まれながらにして視える能力を持つ彼女は、幼い頃から理不尽な恐怖に晒されてきた。だから、幽霊に振り回されない世間一般の価値観で生きたい一心で、霊を科学的に否定する立場である臨床心理士になったのだ。

 

 ただ、どうしたって視えてしまうことには変わりない。その結果、相談者には「幽霊は幻覚だ」と心理学的に納得させ、その裏でこっそりと霊を捕獲し実家で供養してもらう……。世にも新しい、いる派といない派を器用にまたぐハイブリッドな診療(除霊)スタイルが確立してしまったのである。