5月6日の西武戦に敗れ、31試合目にして自力優勝の可能性が消滅……。
5月7日現在(以下同)、7勝23敗1分でもちろん単独の最下位である。昨シーズンのロッテの序盤のコケ方もなかなかド派手なもんだったが、それすら上回る109敗ペース。SNS等を見ていてもファンからの辛辣な言葉を目にする事が日に日に増えてきている。
しかーし、そんな中でも素晴らしい数字を残している選手はいる。岸孝之投手だ。現在2勝1敗で防御率1.89はパ・リーグ投手2位の数字である。援護点もなかなか入らない中、5月2日のファイターズ戦では今シーズン初完封。その日一軍戦初出場の清宮幸太郎からは最初の打席でこそ初ヒットを許したものの、その後は2打席連続三振に切ってとった。試合後に清宮が初ヒットよりも2つの三振を悔しがったのは流石の一言だが、あの決め球のチェンジアップは彼にプロ野球一軍のピッチャーのレベルをまざまざと見せつけた事だろう。
そしてもう一人、辛島航投手を忘れてはいけない。ここまで5試合に登板して0勝3敗とこれだけ見れば何が凄いの? であるが、皆さんお気づきだっただろうか? 実は5月7日現在31回2/3を投げて防御率2.56。規定投球回を投げている左ピッチャーの中ではパ・リーグナンバーワンの数字なのだ。もちろんライオンズの菊池雄星よりも上だ。しかしながら取ってもらった得点が5試合で4点ではなかなか勝ち星はつかない。
清宮が「今まで見たことない変化球」を投げた男
さて辛島航とはどんな投手かご存知だろうか?
2008年ドラフト6位で楽天イーグルスに入団し今年で10年目になる選手で、高校時代は福岡の飯塚高校のエースとして活躍し、母校を初の甲子園にも導いた男なのだ。ストレートは140キロ前後だが、緩いカーブにスライダー、チェンジアップを巧みに織り交ぜ打者を翻弄する。特にチェンジアップ、スライダーに関してはゴムボールを投げてるんじゃないかと錯覚するくらいにボールにふわふわ感がまとわりつく。指先から柔軟剤出しとるちゃうかな? とにかくあのふわふわ感は唯一無二である。実際、5月3日に対戦し2つの三振を喫した清宮幸太郎も今までに見たことのない変化球だったと語っていた。
個人的には高校時代からそうだったが、下半身の使い方が素晴らしいと思っていて、しっかり下から上に力を伝える綺麗な投球フォームから腕の振りもいいので、ストレートの後の変化球にふわふわ感がでるのだと思っている。
そしてファンにとってはもはや有名な話だが、ヒーローインタビューでの「普通」。声を張る訳でなく、テンションをあげる訳でなく、笑う訳でなく、至って「普通」だ。
昔は機嫌が悪いのかなぁぐらいに思っていたがそんな事ではない。本人に聞くと試合で全部出し切り喋る力も残ってないのだという。それが辛島航なんだ。でもよーくヒーローインタビューを聞いているとナイスピッチングの後でも自分には厳しく、駄目な部分を細かく自己分析しているし、「一人ずつしっかり抑える事を考えていた」「謙虚に頑張る」などコメントは非常に真面目で、なにより周りの空気に左右されない強さを持った選手なのである。