「以前に比べたら、弱まっては来ていますが、政治は男がやるもの、女性は内助の功じゃないですが、おとなしくしているものだという意識、大声では言わなくなったとしても男尊女卑的なものがまだあります。ただ、女性は“次の世代”のことをより考えて行動している人が多いように思います。色々な問題が、従来の発想では解決しづらくなっているいまこそ、違った視点をもつ女性が議会に進出することが重要なのです」
それを探ろうと、女性議員が半数を占める神奈川県葉山町議会(定数14)を訪ねた。2019年3月の時点で7人いる女性議員も30年ほど前はたった一人だ。“第一号”だった横山すみ子(2019年3月に引退表明)は、議員になった当初、「よくヤジを受けた」と言う。ただ、ゴミや保育園の問題といった生活に密着した課題について議論を重ねる中で、男性議員から「僕たちは気が付かなかった」と言われるようになった。議会に女性の視点や意見が加わることで、徐々に“雰囲気”が変化していったと振り返ってくれた。
同じく長年議員を勤めた畑中由喜子(2019年3月に引退表明)も、女性議員が増えたことで議論が活性化し、それに触発されるかのように男性議員も活発に発言するようになったと言う。こういう変化が生まれたのは、女性議員の方がより社会的な縛りがなく、「これはダメとか、これはこうしようというような考えを割とはっきり打ち出す」傾向があるからだというのだ。
葉山町議会はあくまで一例だが、女性議員は、ゴミや保育園、介護など、男性議員が取り上げなかった生活に密着した課題に、女性の視点・立場でより積極的に取り組む傾向がある。女性議員の存在は、“男社会”に化学変化をもたらす“触媒”のような役割を果たしているのかもしれない。
女性議員を悩ませる「票ハラ」
アンケートからは、やりがいや、議会に起きた変化についての記述もある一方で、女性議員を取り巻くハラスメントの実態も見えてきた。
〈飲み会の席でコンパニオンのような扱いをされた〉
〈服を脱がされる、両脇をかかえて両方から胸をもまれる、スカートをめくられる。おれの女になれ、一晩どうだ、など〉
〈握手をして手を離さない、お酌を強要する、大きく抱きついて愛しているとキスをされた。議員のお尻を触ってみたいと大きな手でつかまれた。告発したいと思ったができなかった〉
アンケートの自由記述欄には、目を疑いたくなるような女性議員の悲痛な声が並んでいた。憤りにも似た驚きを持って読み進める中で、耳慣れない言葉を見つけた。
〈女性議員に対する「票ハラ」は厳然と目の前にある現実である。私も例外ではなく、この現実のなかでもがき苦しんでいる女性議員の一人である〉
「票ハラ」とは一体何なのか、さっそく議員本人に連絡を取った。この女性議員は「票ハラは女性議員なら誰もが経験している」と断言した上で、選挙や日常活動を巡るハラスメントの現状を打ち明けてくれた。