〈女性議員に対する「票ハラ」は厳然と目の前にある現実である。私も例外ではなく、この現実のなかでもがき苦しんでいる女性議員の一人である〉
アンケート調査で見えた、女性議員を苦しめる「票ハラ」とはいったい? 全国1788の地方議会(都道府県・政令指定市・市区町村)と、そこに所属する約3万2000人の議員すべてを対象とした大規模アンケートを行った、NHKスペシャル取材班による新書『地方議員は必要か 3万2千人の大アンケート』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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有権者によるセクハラ的言動は日常茶飯事
一票の力に物を言わせて有権者が行うハラスメント、「票ハラ」が起こる場面は、選挙運動、日常の活動、いずれの場合も問わないという。女性議員は「自分が住む地域は男尊女卑が強いのか、セクハラ的言動は日常茶飯事。ストーカーのように一方的にメールを送りつけてくる、有権者のおじさんから、『ハグさせて』『おっぱい触らせて』なんて言われることもたびたびあった」と憤る。
こんな言葉をかけられて、「怖い」と思わないはずはない。ただ、そう思っても「相手も人間だから、有権者だから、寛容であることも必要だ」と当初は我慢していた。しかし、我慢したという“誠意”は相手には伝わらなかった。女性の支援者に相談したら、「大目に見ようなんて言っていたらダメ」という話になったという。毅然と対応するようにしたところ、徐々に「票ハラ」は受けなくなった。
「有権者はいい人、といった性善説ではやっていられない。有権者の意識を変えることはもちろんだが、ハラスメントを受ける側も毅然と対応するという意識を持たないといけない」(同じ女性議員)
別の女性議員も実態を打ち明けてくれた。選挙運動中は感じなかったが、当選後、活動の際にセクハラを実感する機会が増えたという。例えば、年長の有権者がいる会合に参加した時、水商売の女性に声を掛けるようなトーンで「お姉ちゃん」と呼ばれることが多々あるという。男性議員は当選回数を重ねるたびに、扱いが「重く」なっていくが、女性議員はそうしたことがなく、常に「格下」にみられているような感じがしているのだそうだ。
胸・お尻の形や大きさ、スタイル・容姿に関することをしつこく言ってくる人も多く、無駄に抱きついてくる男性有権者もあとを絶たないそうだ。だからこの女性議員は自由記述欄に次のようなことを書き込んでいた。
〈セクハラを言う人はそれがセクハラという意識がない〉
人と会うときは隣に座らずに、向かい合って座る。手が腰などに回ってきそうな場合は、すっと離れるようにする。自衛策を講ずるしか、いまのところすべはないということだ。また、行政職員や同僚議員からのセクハラを訴える人もいた。