2024年6月13日、JR東海とJR西日本はドクターイエローの引退を発表した。今すぐというわけではない。ドクターイエローは2編成あり、JR東海が保有するT4編成は「2025年1月に引退」と明示。JR西日本が保有するT5編成は「2027年以降を目途に」と、もう少し先になっている。

 東海道新幹線・山陽新幹線で活躍するドクターイエローこと「新幹線電気軌道総合試験車923形」は、「幸せの黄色い新幹線」として親しまれており、子どもたちにも大人気だ。グッズもたくさん販売されている。それだけに引退発表のインパクトは大きい。この日、NHKや民放各局が主要ニュースのひとつとして報道した。

ドクターイエローはお客さんを乗せないから回送列車扱い

 さすがテレビ局だ。運行日が告知されない列車にも拘わらず、動画素材をたくさん持っている。しかし僕らフリーランスがドクターイエローを見る機会はほとんどない。ネットメディアも同様だろう。JR東海に広報用写真をお借りしたり、レンタルフォトを使ったりしてなんとか記事を仕上げることになる。

ADVERTISEMENT

「ドクターイエローが明日走ります」という異例の事前通知

 この連載の2022年10月23日付「一度は見てみたい! あの黄色い新幹線「ドクターイエロー」の“時刻表”があった」もJR東海の広報部からお借りした写真を使わせていただいた。でも、一度はきちんと、自分のカメラで撮りたかったな。そんな思いで夕方のテレビニュースを見ていた。

報道撮影会でバッチリ撮った編成写真

 そのとき、JR東海の広報担当者からメール着信、重ねて電話がかかってきた。

「明日走ります。東京駅で報道撮影の機会を設けます。いらっしゃいませんか」

 急な話ですが、というけれども、ドクターイエローの事前通知は異例だ。万が一情報が拡散しては困るから、あえて前日に通知したのかもしれない。もちろん行きますと即答した。

 翌日、11時15分に東京駅で集合。20人ほどの報道関係者がいた。やっぱり自社で撮影した写真がほしいよね。だれも思いは同じだ。駅構内撮影のため、一般客の迷惑にならないようにと厳命されて18番ホームに上がる。発車案内板に「回送 983 回送列車です。この列車にはご乗車いただけません」と表示されていた。これがドクターイエローを示している。