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まるで洗面器一杯の水を上から…

 そんな日が何日か続くと、当然寝不足になってこられました。結果、入社以来初の遅刻をされたそうです。

「すみません。寝坊してしまいました」そう言うと、先輩は心配そうにこう仰いました。

「最近、顔色が悪いけど体調でも悪いのか」そう言われましたが、部屋に何かがいる気がするという非科学的な話も出来ないので「単なる寝不足です」と答えられました。

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 その日、会社では、入社一年目の社員のための、一泊二日の社員研修の付き添いを決める会議があったそうです。その会議で、広崎さんはその日遅刻して来た事もあり、社員研修に付き添いで行くように言われたそうです。

 広崎さんは、丁度自分の部屋に戻るのも怖いので、一泊でもホテルで宿泊出来たら落ち着けると思い、付き添いで行かれる事になりました。

 社員研修当日、その日の研修を無事に終え、ホテルの部屋に入られると、軽くシャワーを浴びた後、直ぐにベッドで横になられました。

 その日は久しぶりにゆっくりと就寝出来たそうです。

ホテルのベッド

 ゆっくり寝られたせいか、朝の目覚めはとても良かったそうです。ところが、ベッドの上で起きあがろうとしたその時、何かの異変に気が付かれました。

 掛け布団がぐしょぐしょに濡れていたのです。それはまるで洗面器一杯の水を寝ている上から掛けてきたとしか思えないほどだったそうです。

「誰かが入って来て水を掛けたのか。それ以外に考えられない」そう思った広崎さんは、直ぐにフロントに電話して、部屋に来るように仰いました。

 ホテルの方が来られましたが、原因は勿論分かりません。部屋の鍵は掛かっていましたし、密室状態です。もしも鍵を開けられるとしたら、ホテルの方以外に考えられません。

「お前らの誰かが嫌がらせをしたんだろ」そう広崎さんが仰いましたが、ホテルの方は、「それは絶対にないですし、何なら防犯カメラを確認してみますか?」とまで仰ったそうです。

 そうこうしている所へ、広崎さんと同じく研修の付き添いの他の社員さんが来られて、穏便に済まされたそうです。ここ数日の寝不足のせいもあり、広崎さんは少し怒りっぽくなっておられたのでしょう。