京都蓮久寺の三木大雲住職のもとには、奇妙な体験をした人、助けを求める人からの相談が、日々持ち込まれてきます。拾った白い綺麗な石を目玉だという友達、骨董市で買った不思議な絨毯、小さいおじさんを捕獲して家で飼っていると言う人――。

 新刊文庫『怪談和尚の京都怪奇譚 積徳の旅篇』にも、日常に潜む怪異現象や不気味な出来事が数多く掲載されています。その中から、ある夫婦が夜のランニング中に遭遇した奇妙な「体育座りの男」を紹介します。(全2回の第2回/前編を読む

ランニングする女性の首元に両腕を回し、引きずられる形で…

 しかし、奥様にはそう思う理由があったのです。

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 まず、夜にあの場所で体育座りをしている目的が分からない。それに、犬の散歩をされていた男性には、まるで見えていないかのようだった。しかし犬は男性に反応していた。これらの理由から、あの男性がこの世の人ではないかも知れないとおっしゃるわけです。

 そこでご夫婦は、再度確認をしに行かれる事にしました。少し恐怖心もあったので、車で行かれたそうです。

 自宅を出て数分後、あの男性の座っておられた消えた街灯付近まで来られ、少し手前に駐車されました。そして、そこからゆっくりと、消えた街灯の所まで車を進めることにしました。

 その時、一人の女性がランニングをしながら、車を追い越されました。その女性は消えた街灯の所まで行くと、一瞬何かに気が付いて驚かれた様子を見せました。しかし、そのまま何も言わずに通り過ぎられたそうです。

ランニングする女性

 驚かれた様子から、やはり体育座りの男性はまだあの場所におられるのだとお二人が思った瞬間、消えた街灯の辺りから、突然男性が現れたそうです。あの体育座りの男性です。

 男性は、先ほどの女性の後に付いて走り出しました。そして女性に飛びついたのです。驚いたご夫婦は、直ぐに助けに行こうとされました。しかし、女性はそのまま何事もなかった様子でランニングを続けておられるらしいのです。男性は女性の首元に両腕を回し、引きずられる形で抱きついていたそうです。

 ご夫婦は不思議に思いながらも車を女性の横に着けられました。すると女性も不思議そうにご夫婦を見てこられました。